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zoom RSS 一生逸品 SEMIRAMIS

<<   作成日時 : 2017/06/27 17:30   >>

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 梅雨時の寒暖の温度差が激しくて身も心も憂鬱気味な昨今ではありますが、皆様如何お過ごしでしょうか…。
 4月から今月にかけての3ヶ月間、8月に川崎クラブチッタで開催のイタリアン・ロックフェスに呼応した連動企画でRRR、そしてデリリウムを取り挙げてきましたが、最終月の今回最後を飾るのは…幻のトリデントレーベルが世に送り出したビリエット・ペル・リンフェルノと共に人気を二分してきたもう一つの雄にして、あたかもカリスマ級に神格化され混沌と邪悪のエナジーを帯びた闇の饗宴を謳い奏でる、イタリアン・ヘヴィシンフォニック秘蔵の申し子と言っても過言では無い、古代バビロニア女王の名の下に君臨する“セミラミス”に今再び栄光のスポットライトを当ててみたいと思います。

SEMIRAMIS/Dedicato A Frazz(1973)

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       1.La bottega del rigattiere
       2.Luna Park
       3.Uno zoo di vetro
       4.Per un strada affolata
       5.Dietro una porta di carta
       6.Frazz
       7.Clown

 名作・名盤多数の70年代イタリアン・ロックであるが、当時のシーン数広しと言えどここまで不気味でインパクト大なジャケットは他にあっただろうか…。
 俗に言う顔面ジャケットプログレに於いて、御大クリムゾンのデヴュー作並びGGのデヴュー作も然る事ながら同国のムゼオ・ローゼンバッハにも負けず劣らず、今回本篇の主人公でもあるセミラミスが遺した唯一作で描かれた…あたかもブロンズ像を思わせる様な陰鬱で血色乏しい死相が表れ、彼等のバンドネームとなった古代バビロニア王国の女王とおぼしき人物画の意匠に、過去幾数多ものプログレッシヴからイタリアンロック・ファンを含めたリスナー達から奇異な目で見られ、果ては気味悪がられて震えあがらせた事だろうか(苦笑)。
 女王セミラミスに関し様々な文献やらウィキペデイアで検索し調べてみたら、かの世界七不思議の一つ“バビロンの空中庭園”を築いただけでなく、美貌と英知を兼ね備えている一方贅沢好きで好色でかつ残虐非道に加えて黒魔術にも長けていたと記されており、成る程彼等セミラミス唯一作の特色でもある地中海民族の旋律、邪悪で漆黒の闇のカオス渦巻くエナジーが迸るサウンドにはまさしくイメージ通りの合致と言わずもがなであろう。
 余談ながらもだいぶ昔に新橋の居酒屋にてプログレ仲間達と談笑していた時に、ふいにマーキー誌創設時の古株のS氏の話題に及んだ際、Sさんってどんな人?と訊ねたら“セミラミスのジャケットの顔みたいな表情している”との返答に思わずビールを吹き出してしまった事を未だに記憶しているから、我ながら正直困ったものである…。

 プログレッシヴ・ロック元年でもある1970年、ローマ市内の当時15歳のティーン・エイジャーで後のセミラミスの中心人物となるMaurizio Zarrilloを筆頭に従兄弟Marcello Reddavideによって結成され、2年後1972年にMaurizioの実弟Michele Zarrilloが加入し若干のメンバーチェンジを経てローマ市内で地道にライヴ活動を経た後、同年夏に開催されたVILLA PAMPHILI POP FESTIVAL出演を機に一躍脚光を浴びる事となる。画像


        Paolo Faenza:Ds, Per
        Marcello Reddovide:B
        Gianpiero Artegiani:Ac‐G, Syn
        Michele Zarrillo:G, Vo
        Maurizio Zarrillo:Key


 VILLA PAMPHILIのフェスティバル出演で観衆の心を鷲掴みにし手応えを得た彼等は、当時インディーズ系のマイナーな範疇ながらも新興レーベルとして注目を集め、後にオパス・アヴァントラ始めトリップの4作目(最高傑作のラストアルバム)、果てはセミラミスと共に人気を二分するビリエット・ペル・リンフェルノを世に送り出したTRIDENT(トリデント)のスタッフの目に留まり、彼等5人は渡りに舟と言わんばかり程無くして契約を結びデヴュー作に精力を傾けてレコーディングを開始する(但し、後年ドラマーのPaolo Faenzaのインタヴューから、当時はまだメンバー全員が未成年だったが故に彼等の親御さん達とトリデントとの契約によるものだったそうな)。
 翌1973年、時代はまさに第一次イタリアン・ロック絶頂期の真っ只中、ムゼオ・ローゼンバッハ『Zarathustra』始めチェルヴェッロ『Mellos』といった邪悪で闇のエナジーを纏ったイタリアン・ヘヴィプログレッシヴの名作に追随するかの如く、トリデント・レーベル期待の新星としてセミラミスは『Dedicato A Frazz』を引っ提げ堂々と鳴り物入りでデヴューを飾る事となる。
 ちなみにアルバムタイトルの文節でもあるFrazzとは、もう既に皆さん御存知の通り読んで字の如し上記メンバー5人の頭文字を合わせた造語にして、本デヴュー作で描かれた…さながら地獄や冥府とおぼしき混沌の回廊を巡る主人公=苦悩する彼等5人の映し鏡そのものと言っても異論はあるまい。
 同年期デヴューのムゼオやチェルヴェッロにも匹敵しつつ、前年のオザンナ『Palepoli』、イルバレ『YS』、果てはRRRのデヴュー作等に触発され意識しつつも、絶望と希望の狭間をも彷彿とさせる狂騒なる世界観を高らかに謳った妖しくも孤高なる調べはセミラミス唯一無比にして、ヘヴィロックが持つダークサイドな持ち味と重厚さに加えてアコースティック+地中海古謡の素養とジャズィーな側面すら垣間見える傑作へと押し上げたのは最早言うに及ばず。
 見開きジャケット内側に描かれたカオス渦巻く狂気繚乱で不気味な意匠は、さながらピカソの“ゲルニカ”をもしダリの様なシュールタッチで描いたらこんな風になったと言わんばかりな、彼等セミラミスの音世界に色を添えるには十分過ぎる位のインパクトを与えていると言っても過言ではあるまい
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 ユニゾンを効かせたシンセサイザーに、せわしなくもけたたましいヴィブラフォン、タランテッラ調のアコギ(マンドリン?)とが不協和音の如く響鳴するイントロダクションに導かれ、狂気と戦慄の終わり無き宴が幕を開けるオープニング1曲目、Michele Zarrilloのアジテーション風な語り口調をも思わせる淡々としたヴォイス、ヘヴィなギターリフ、パーカッシブなエレピ、リリシズム漂うアコギにリズム隊が渾然一体となったカオスの渦に聴き手はいつの間にか惹き込まれている事だろう。
 朗々たるシンセやオルガンに誘われ、貴方(貴女)達はただ静かに悠久と冥府への大海原の波に漂いその身を委ねているだけで良いだろう…。
                 
 ロングトーンのギターを合図に喧騒と狂騒とも付かぬ大仰なアンサンブルがせめぎ合う2曲目、ストリング・シンセ或いはオルガンの耽美で深遠な調べ、デカダンに謳い奏でられるアコギとヴォーカル、クラシカルなオルガンが顔を覗かせる辺りともなると、それはあたかも満天の星空の下…幻想的な月夜に照らされたルナパークで繰り広げられる妖しくも甘く切ない舞踏と饗宴が想起出来るだろう。
 新月の名曲「鬼」のイントロを思わせる様なシンセの断続音から始まる3曲目、アコギとティンパニーによる繊細さと重厚さが同居したメロディーラインとリリカルなヴォイス、クラシカルで荘厳なる教会風なオルガンに追随するかの如くヘヴィで且つアヴァンギャルドに展開するギターとシンセが被さりつつも、いきなりアコギとヴィブラフォンによる牧歌的な転調に変わるや否や、クリスタルな神秘とでもいうのか筆舌し難い多彩なパーカッション群による不思議でミニマルな趣の余韻が印象的ですらある。
 エレピとシンセによる小気味良いイントロの4曲目は、あたかもジャーマン系アシッド感覚+電子音満載なクラウトロック風から初期PFMを連想させるアコギのソロへの転調が聴く者の心の琴線を揺さぶる好ナンバー。
 中盤から後半にかけて正統派イタリアン・ロックたる王道を地で行く抒情と陰鬱が混在した音空間には聴き手の誰しもが圧倒される事必至。
 ストリング・シンセの音の壁とギター、ベースとの応酬、朗々たる啓示なヴォイスにアコギとシンセのせめぎ合いが得も言われぬ位の美しさとエクスタシーを醸し出しているであろう5曲目も聴き処満載。
 ストリング・シンセの巧妙な使い方、オルガンとシンセの絶妙な間の取り方…各鍵盤系の長所を活かしたMaurizio Zarrilloのスキルの高さと手腕の見事さが際立っている。
                 
 ジャズィーな佇まいのエレピとヘヴィロックなリフによる一見二律背反で対極ともいえる旋律と構図がミスマッチと思えない位にコンバインしたイントロの6曲目、アコギとストリング・シンセをバックにMichele Zarrilloの歌唱力が光っている中、ZEP調のヘヴィサウンドに加えてクラシカルなキーボードパートが半ば強引に転調する様は、構築と破綻との狭間から見い出せる美意識が存分に堪能出来て、実にセミラミスらしい面目躍如さが如実に表れており理屈と感動をも越えた心地良さが脳裏に刻まれる…そんな思いですらある。
 ラスト7曲目に至っては、エレキとアコギとの早弾きアルペジオ全開で、後を追うかの様なヴィブラフォン、ストリング・シンセの共鳴が終局へと向かう様は、狂気の道化師があたかもリスナーに迷路にも似た地獄巡りは決して終わる事の無い堂々巡りであると告げているかの様で、中盤から後半にかけてどことなくセンチメンタリズムな色合いに染まった抒情性の中に刹那なほろ苦さのみが残されて幕を下ろすといった具合である。

 1973年当時のイタリアン・ロック隆盛期に於いて、有名無名問わず各々のレコード会社から雨後の筍の様にリリースされるバンドやアーティストはまさしく団栗の背比べみたいな様相を呈しており、そんなさ中に一躍世に躍り出たセミラミスであったが、会心の一枚であるという自負を抱き満を持してリリースされたデヴュー作であったにも拘らず、悲しいかな当時弱小インディーズ系マイナーレーベルであるが故の運命とでも言うべきなのかプロモート等の諸々を含めた力不足が災いし、思った以上にセールスが振るわず伸び悩みに苦戦を強いられ、結果的には惨敗を喫するという憂き目に遭ってしまう。
 当時10代半ばないし後半のティーンエイジャーだった若い彼等にとっては、青春の思い出云々という以前に傷付き悩み打ちひしがれるといった大いなる挫折そのものだったに違いあるまい…。
 それでも気丈にライヴ活動をこなしつつ、失地挽回と巻き返しの機会を窺っていたものの、結局翌1974年夏のVILLA PAMPHILIのフェスティバルを最後にバンドを解体させる事となる。

 ギター兼ヴォーカリストのMichele Zarrilloはバンド解散後、正式にプロのソロアーティストに転向しセミラミス時代とは打って変わって時流の波に乗ったイタリアン・ポップスシンガーとして数々のヒット曲を世に送り出し、サンレモ音楽祭の常連組に数えられるまでになった現在もなお精力的に活躍中で、1998年には単独で初来日のソロ好演を果たしユーロロック並びイタリアン・ポップスファンは思わず彼のステージ上での雄姿に色めき立ったそうな…。
 Michele以外の他のメンバーのその後の動向については詳細こそ明らかにされてはいないものの、一時的ながらも音楽業界から距離を置きつつも、時間と時代の推移と共に徐々に音楽関係の裏方ないしセッション活動に復帰していたとの話である。
 セミラミスが遺したたった一枚の唯一作も、その後のイタリアン・ロック愛好家達の地道な蒐集と努力の甲斐あって、70年代末期から80年代全般に吹き荒れた高額プレミアムなイタリアン・ロック廃盤ブームを担う一枚として世に認知され、幻のトリデントレーベルの入手困難盤としてオパス・アヴァントラやビリエットと共に中古廃盤専門店の壁に鰻上りな万単位の額で壁に掛けられ羨望の眼差しで注目されていたのは最早言うまでもあるまい。
 評判が評判を呼びセミラミスを含めたイタリアン・ロックの名作・名盤がいたずらにブート紛いな復刻盤として世に出回る様になった頃、粗悪な音質であろうとなかろうとファンはこぞって飛び付いたのが嬉しい様な悲しい様な思いだったのが昨日の事の様に思い出されるから困ったものである(苦笑)。
 後年は日本盤やイタリア盤を含めセミラミスがアナログLP盤並びCDとして正式にリイシューされ容易に入手出来るようになり、その甲斐あってか90年代以降〜21世紀の今日までに至る70'sイタリアン・ロックリヴァイバルの気運と呼び声が高まると同時に、前回紹介のデリリウム始めRDMのみならず、単発リリースのみで終止したムゼオ・ローゼンバッハ、マクソフォーネ、アルファタウラス、RRR、果てはビリエット・ペル・リンフェルノまでもが現役第一線として復帰を果たす事となり、画像時代の気運と追い風に後押しされる形で呼応するかの様にMaurizio Zarrillo、Paolo Faenza、そしてGiampiero Artegianiというオリジナルメンバー3人が集結し、セミラミスは再び息を吹き返すと共に新たなメンバーとしてVito Ardito (Vo, G)、Antonio Trapani (G)、Ivo Mileto (B)、Daniele Sorrenti (Key, Flute)の4人を加え7人編成の大所帯となってシーンへの復帰を見事に果たす事となる。
 そして2017年の来たる8月、川崎クラブチッタにてデリリウム、RRRと共に初めて日本の地を踏む彼等は美貌の悪しき女王セミラミスの名の下に、混迷の世にカオスと漆黒の闇のエナジーを纏って我々聴衆の前で奇跡と狂気を孕んだ白熱のライヴパフォーマンスを披露するまでに至った次第である。
 時代と世紀を越えて日本へとやって来た妖(あやかし)の伝道師たる彼等の挑戦を、私達は今こそ真正面から堂々と受けて立たねばなるまい…。

セミラミスFacebook
https://www.facebook.com/Semiramis-Official-314924128694194/

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