Monthly Prog Notes

 6月も終盤に差しかかり鬱陶しい梅雨時の空の下、今回お届けする「Monthly Prog Notes」のラインナップは、ベテラン並び超大ベテラン勢が織り成す文字通り必聴必至で屈指の話題作が目白押しです。
 21世紀イタリアン・ロックシーンに於いて今や70年代に活躍した名バンドが続々と復活再結成を遂げるのは定番ともなった感がありますが、ここにまた70年代のレジェンドがまた一つ復帰する事となりました。
 かつてマグマレーベルに唯一作を遺して表舞台から姿を消したと思われていた“フォラス・ダクティルス”が、3人のオリジナルメンバーを核に新メンバーを擁し完全新生を遂げた実に46年振りの新譜2ndは、デヴュー作の流れを汲んだ正統派イタリアン・シンフォニックをバックに詩の朗読が語られるスタイルが健在の、まさしくイタリアの芸術ここにありきと言わしめるクオリティーの最高作となっています。
 久々のドイツのシーンからは21世紀プログレッシヴであるにも拘らず、70年代の混沌としたジャーマン・ロックのイディオムと音楽性を見事現代に甦らせた注目株“リキッド・オービット”の3年振りの新譜2ndがお目見えとなりました。
 徹頭徹尾サイケでスペイシーな趣と雰囲気を存分に湛えた、70年代のフランピーに追随匹敵するであろうジャーマン・ハードロックの王道を地で行く痛快無比な一枚は聴き処満載です。
 ポーランドからも2012年の3rdリリース以降、長きに亘ってその沈黙を守り続けていた21世紀ネオ・プログレッシヴの雄“ムーンライズ”が7年振りに心と魂を揺さぶる通算4作目の傑作をリリースしました。
 デヴュー以来久々にバンドリーダー御自らによるソロワーク的な作風で、あたかも原点回帰を窺わせるマルチプレイながらもヒューマンでリリシズム溢れる東欧のイマジネーションは、リスナー諸氏に感動を呼び起こすポリッシュ・シンフォニックの決定版と言っても過言ではありません。

 夏の訪れを待ち侘びつつ、冷たい雨の降りしきる情景を見つめながら楽師達の紡ぐ感動的な時間と夢想を暫し御堪能頂けたら幸いです…。

1.PHOLAS DACTYLUS/Hieros Gamos
   (from ITALY 2019)

画像
      - Part 1 - Hieros Gamos
       1.Hieros Gamos
      - Part 2 - Ognuno da Lande Diverse
       2.A Personal Gift/3.Yellow and Blue/4.I Don't Want...
      /5.Ogni Volta che Tocco il Tuo Viso/6.Ninna Nanna per Gianluca
      /7.Une Valse pour Nous/8.Ballata di un Mercante di Sogni

 1972年のニュー・トロルス(一時的な)分裂後、ヴィットリオ・ディ・スカルツィが設立したマグマレーベルより73年に唯一作『Concerto Delle Menti』を遺し、その面妖で奇異なアートワークと相まってバンコのデヴュー作ばりのロックサウンドをバックに淡々と詩の朗読が語られるという独特のスタイルで、まさしく幻の中の幻的なバンドとしてその名が知られていたフォラス・ダクティルスが、実に46年振りに再結成を遂げ、事実上の2ndに当たる本作品でめでたく21世紀のシーンに復帰する事となった。
 73年の唯一作と同様、詩の語り手でもあるPaolo Carelliとキーボーダー、ベーシストのオリジナルメンバー3人に新たなギタリストとドラマーを迎えた5人編成に加えて、画像多方面からの協力者の支援の下で製作された、かつてのデヴュー時に負けず劣らずその独特なる作風と個性は今作でも健在であり、21世紀という時流の波に安易に流される事なく…良い意味で70年代の時間と空気が頑なに守られたまま再び歯車が回りだしたかの如く、そのイタリア然としたあくまでアーティスティックな表現者というスタンスで名実共に職人の域にして匠の境地に達したであろう、純然たる音楽と文学が融合した総合芸術にも匹敵する熟成された一つの作品として、もはやヴィンテージ・ロック云々やら原点回帰、古色蒼然といった次元やカテゴリーをも超越した、今の時代にこそ万人が聴かなければならない必聴必至で最高の一枚であると断言出来る。
 時代や世紀を問わず、アートワーク総じてこれこそ紛れも無く心の琴線を揺さぶるイタリアの“音”そのものである。
                 

Web https://www.facebook.com/Pholas-Dactylus-Band-525326084258211/ 


2.LIQUID ORBIT/Game Of Promises
   (from GERMANY 2019)

画像
       1.See Me Falling
       2.Shared Pain
       3.Please Let Her Go
       4.Game Of Promises
       5.Fly With Me
       6.Verlorene Karawane

 2016年にバンドネームを冠したデヴューアルバムをリリースし、その(良い意味で)時代逆行・錯誤とも思える70年代イズムを踏襲したサイケデリアとスペイシーさが混在したであろう、プログレッシヴで正統派なジャーマン・ハードロックの音色を21世紀の現代に色鮮やかに甦らせた、ドイツはブレーメン出身の注目株 リキッド・オービット3年振りの2ndが満を持してここに到着した。
 紅一点の歌姫Sylvia Köpkeを擁するバンドメンバーのラインナップは前デヴュー作と変わる事無く不動のままで、同じ音楽的嗜好と諸々共通の好みだけではないメンバー間の固い絆と信頼関係がバンドの身上と言えるのであろう。
 70年代の先駆者バンドでもあるフランピーの初期2枚の好作品にも似通った音楽性やシンパシーも然る事ながら、画像模倣や物真似云々といった次元とは一線を画した、所謂あの当時のジャーマンロックにあった古き良き混沌とした時代ならではの空気感とアシッドな雰囲気への懐古や憧憬に加えて、伝統と王道を心と肌で感じ取り継承する高邁な精神と心意気が、時流の波に流される事無く自らの音楽性に反映され確固たる自信と誇りとして表れているのだろう。
 メロトロンこそ近年のデジタル仕様だが、ハモンドやフェンダーローズはしっかりと本物のアナログ機材を使用している辺り、彼等なりの強いこだわりと手作り感がひしひしと感じ取れて、時代相応のメロディック・ロックやらプログメタル、果てはポストロックといった概念やトレンドなんぞ一切無縁で且つ無用なものでしかないのだろう。
 決して一朝一夕では為し得ない硬派な姿勢と頑ななサウンドスタイル、何物何人にも縛られないロック本来が持っていた自由な気風に満ち溢れた、まさしくサイケデリックな意匠の如く幻惑的で夢見心地になれる素敵な好作品である。
                 

Web https://liquidorbit.bandcamp.com 
    https://www.facebook.com/liquidorbit/


3.MOONRISE/Travel Within
   (from POLAND 2019)

画像
       1.Dive/2.The Answer/3.Rubicon
      /4.Little Stone/5.Between The Lies
      /6.Like An Arrow/7.Time/8.Calling Your Number

  2012年リリースの3rd『Stopover - Life』以降、長きに亘って活動を停止(休止)していたポーランド・ネオプログレッシヴの雄ムーンライズが、7年振りの沈黙を破ってここにめでたく通算4作目の新譜を引っ提げて再び我々の前に帰って来た。
 2ndと3rdに見られた完全バンドスタイルから一転して、今作はマルチプレイヤー兼バンドリーダーでもあるKamil Konieczniak自身によるデヴュー作以来久々のソロワーク的な趣が色濃く反映され、改めて原点回帰に立ち返ったかの様な自分自身を内省的にもう一度見つめ直そうといった意向が見受けられる。
 マルチプレイといっても機械的な多重録音系とは真逆な、画像Kamil手掛けるキーボードからギター、リズムセクションに至るまでしっかりとしたバンドスタイルを踏襲した心と血の通ったヒューマンでリリシズム溢れるシンフォニックワールドを構築しており、新たに迎えたヴォーカリストのハートフルな歌心と相まって、キャメルやマリリオン影響下ながらも如何にもポーランドらしい心震わせる様な泣きのイマジネーションとヴィジュアルがこれでもかと言わんばかりに聴く者の脳裏を過ぎり木霊する事だろう。
 かつてサックスを担当していたDariusz Rybka(同国のミレニアムのメンバーも兼ねている)が6曲目のみゲスト参加しているのが嬉しい限りで、彼のサックスが響鳴するだけでバンドの持ち味ともいうべき哀愁と詩情が心を打ち目頭をも熱くさせる。
 ネオ・プログレッシヴそしてメロディック・シンフォといった理屈や概念をも凌駕する感動的な調べに暫し身を委ねていたい、そんな秀逸な一枚である。
                 

Web http://www.myspace.com/moonriseband 
    https://www.facebook.com/Moonrise-146440865394699/

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック