21st Century Progressive New Face
“寒の戻り”を肌で感じつつも春間近な3月末。今回の「21st Century Progressive New Face」は、久々に我が日本のジャパニーズ・プログレッシヴシーンから彗星の如く登場した期待の新星2バンド、そして…日本に負けじとユーロ・ロック台風の目とも言うべきオランダから期待のニューカマーが登場しました。
美しく華麗にして繊細さとダイナミズムを感じさせるヴァイオリンをフィーチャーした“ファンタスマゴリア”、そしてかのミスターシリウス以来であろうフルートを大々的にフィーチャーしたユーロ・ロックへの憧憬、哀愁とリリシズム、エキゾチックさを纏い、先の先人ファンタスマゴリアに続く関東期待の新鋭“ティー”。2バンド共、ジャパニーズ・シーンにおいて新たな一頁と足跡を踏み出した大注目株です!
オランダからも、イギリスのアクアプラネージに匹敵するであろう、『フォックストロット』~『トリック・オブ・ザ・テイル』期のジェネシスの完全なるフォロワーにして、バンド・ネーミングを含めて随所にプログレッシヴ・ロックに対する満ち溢れんばかり愛情が感じられる“ファイヴ・ブリッジス”は、まさに要注目株にして必聴と言えるでしょう。
桜舞い散る暖かな春風に包まれながら、新進気鋭の温もりある音世界に是非触れてみて下さい…。
1.FANTASMAGORIA/Day And Night
(from JAPAN 2009)
1.Crusader/2.Blue Rice/3.Into The Sea
/4.MNK/5.The Sparrow/6.竜頭蛇尾-Anticlimax
/7.Omoplatta/8.Traveling Space/9.Joanni
/10.光降り注ぐ丘-Lights That Fall Down The Hill/11.Epic
ジャパニーズ・プログレッシヴシーンにおいて、KBBの壷井彰久氏と双璧を成す女性ヴァイオリニスト藤本美樹女史をメインフロントにG、Key、B、Dsの5人編成による“ファンタスマゴリア”。
2004年に初出の5曲入りデモCD-Rを経て、今回がポセイドンからリリースされたバンド実質上のデヴュー作と言えよう(彼等のHP上では2ndとカウントされているが、個人的な見解で1stとさせて頂く事を御了承願いたい)。
全曲ヴォーカルレスながらも、バンドのネーミングからしてカーヴド・エア影響下を連想される向きも多々あるが、それは当たらずとも遠からずと言えよう。
むしろ、クラシカルでシンフォニックなヴァイオリンとキーボードのフィーチャー度から音の重厚さと壮麗なイマージュにおいては、本家カーヴド・エアよりも格段に上回っており、加えてヘヴィ&ハードエッジさが同居した伸びやかに鳴り響くギターと強固なリズム隊との絶妙なアンサンブルも実に申し分無く、改めて藤本を始めとする全メンバーのメロディーメイカーとしての技量とコンポーズ能力の上手さには頭の下がる思いである。ヴァイオリンを前面的に押し出したプログレッシヴは過去確かに数あれど、ファンタスマゴリアが打ち出した“ありそうで無かった新たなるサウンドスタイル”たるものが本作品では見事に表れてて、UKやPFM、カンサス、アウターリミッツとは、またひと味・ふた味も違うサウンド・スカルプチュアが堪能出来よう。
後者のティーと共に、ジャパニーズ・プログレッシヴにおけるエポック・メイキングな趣を湛えた近年稀に見る傑作にして、大いなる可能性を秘めた軌跡・収獲と言えよう。
2.TEE/The Earth Explorer
(from JAPAN 2009)
1.L'oiseau Bleu (Trans Europ Express)/2.Nomad
/3.Sirocco Chase/4.Col De L'Iseran
/5.Aurora/6.City
バンドの正式名称は本アルバムタイトルでもある“The Earth Explorer”だが、実質上のフルレングス・デヴュー作録音を機に、昨年10月バンドの正式名を“ティー”と短く改称した。
先のファンタスマゴリアが2004年にデモCD-Rをリリースしてから3年後、跡を追うかの如く彼等も4曲入りのライヴ・デモCD-Rをリリースし、その後は地道で堅実なライヴ活動が実を結びポセイドンから正式にデヴューの運びとなった次第である。ファンタスマゴリアがヴァイオリンをフィーチャーしているのに相対し、ティーは専任のフルート奏者にG、Key、B、Dsから成る5人編成で、70年代のユーロ・ロックが持つ抒情性とロマンティシズムといった作風・血筋、エキゾチックなイマジン(特に2曲目の“Nomad”辺り)を日本という異国の地で脈々と受け継いだ正統派の伝承者であると言えよう。シンフォニックからジャズロック、エスノといった多種多彩な側面とヴァラエティーに富んだ、デヴュー作ながらも良い意味で“曲者”的な意欲作に仕上がっている。
ジャパニーズ・プログレの先人…ケンソーの『夢の丘』やアイン・ソフの『帽子と野原』辺りに似通った風合いと雰囲気が感じられるものの、本作はむしろ、よりタイトで且つロック寄りの方向性が感じられる。その一方で2曲目の“Nomad”でのシンセの使用法には一瞬「アレア!?」と連想する断片が感じられ思わずニヤリとする事受け合いであろう。全体的な作風としては、日本のプログレにして日本人的なバタ臭さが皆無な、ユーロ・ロックの洗礼を受けた者でしか表現出来ない域にまで達していると言ったら言い過ぎであろうか…。
彼等の唯一無比な音空間には、ファンタジックな幻想世界や妖精物語、エセ少女趣味的で陳腐なジャパニーズ・プログレは存在しない。そこにあるのは…それぞれ聴く者の脳裏に思い描かれるヨーロッパ大陸への見果てぬ“夢”と“憧憬”そして“記憶”そのものと言っても過言ではあるまい。
3.5BRIDGES/The Thomas Tracks
(from HOLLAND 2008)
1.Didymus/2.Babylonian Curse Reversed/3.On Calpe's
/4.The Spell Of Eternity/5.Martialis' Reveries/6.Tricks & Treason
/7.Lovernius' Song/8.Batavian Revolt/9.Amazons & Heaven
/10.Sign On The Wall
ユーロ・ロック台風の目オランダから、何の前触れもインフォメーションも無く突如として現れた驚愕の新人“ファイヴ・ブリッジス”。Vo、G、B、Key、Dsから成る基本的な5人編成である。
バンドのネーミングはかのナイスの名作アルバムから由来しているが、かと言ってナイス、EL&P影響下だとかエマーソン的な早弾きキーボードはどうか期待しないように(苦笑)。彼等のサウンドの骨子は最早言い尽くされた感こそあれど、誤解を恐れずに言えば『フォックストロット』~『トリック・オブ・ザ・テイル』の頃のジェネシス、或いは黄金期のイエスないしジェントル・ジャイアントまでもがしっかりと加味された、プログレッシヴへの愛情に満ち溢れたプログレッシャーによるプログレッシヴ・ロックを愛する者の為の音楽そのものと言っても異論はあるまい。
過去から現在に至るまで世界各国に数多く存在するジェネシスをリスペクトしているフォロワー・バンド…古くはアイヴォリー、ノイシュヴァンシュタイン、デイス、昨今ならマーティガン、ザ・ウォッチ、パペット・ショウ…等と肩を並べる位、彼等は臆する事無く“ジェネシス・ファン”であると共に“プログレッシヴ・ファン”である事を誇りに、後ろめたさや迷いはおろかコピー紛いなんぞ微塵にも感じさせない位の自信と気概で臨んだ、確固たるプライドを武器に初心表明とも取れる会心のデヴューを飾ったと言えよう。
CDインナーの意匠にしろ、孤独感にも似た都会的ファンタジーを題材にしたかの様な現代(いま)のヨーロッパのヴィジョンを反映するかの様に、伝統的且つ(良い意味で)古色蒼然とした音色に敢えてリズムマシンを導入したモダンで現代的なセンスとのコンバインは、あたかも他のジェネシス影響下バンドとの類似性を避けた意欲的な試みの如く非常に好感が持てる。
如何にも地味で何の芸もヒネリも無い凡庸なジャケットに騙されない様に…。ジェネシス・ファン始めシンフォニック・ファンは聴かないと確実に損をするという事だけは断言しておきたい。本作品、アクアプラネージに続く必聴作にして傑作級!
美しく華麗にして繊細さとダイナミズムを感じさせるヴァイオリンをフィーチャーした“ファンタスマゴリア”、そしてかのミスターシリウス以来であろうフルートを大々的にフィーチャーしたユーロ・ロックへの憧憬、哀愁とリリシズム、エキゾチックさを纏い、先の先人ファンタスマゴリアに続く関東期待の新鋭“ティー”。2バンド共、ジャパニーズ・シーンにおいて新たな一頁と足跡を踏み出した大注目株です!
オランダからも、イギリスのアクアプラネージに匹敵するであろう、『フォックストロット』~『トリック・オブ・ザ・テイル』期のジェネシスの完全なるフォロワーにして、バンド・ネーミングを含めて随所にプログレッシヴ・ロックに対する満ち溢れんばかり愛情が感じられる“ファイヴ・ブリッジス”は、まさに要注目株にして必聴と言えるでしょう。
桜舞い散る暖かな春風に包まれながら、新進気鋭の温もりある音世界に是非触れてみて下さい…。
1.FANTASMAGORIA/Day And Night
(from JAPAN 2009)

/4.MNK/5.The Sparrow/6.竜頭蛇尾-Anticlimax
/7.Omoplatta/8.Traveling Space/9.Joanni
/10.光降り注ぐ丘-Lights That Fall Down The Hill/11.Epic
ジャパニーズ・プログレッシヴシーンにおいて、KBBの壷井彰久氏と双璧を成す女性ヴァイオリニスト藤本美樹女史をメインフロントにG、Key、B、Dsの5人編成による“ファンタスマゴリア”。
2004年に初出の5曲入りデモCD-Rを経て、今回がポセイドンからリリースされたバンド実質上のデヴュー作と言えよう(彼等のHP上では2ndとカウントされているが、個人的な見解で1stとさせて頂く事を御了承願いたい)。
全曲ヴォーカルレスながらも、バンドのネーミングからしてカーヴド・エア影響下を連想される向きも多々あるが、それは当たらずとも遠からずと言えよう。

後者のティーと共に、ジャパニーズ・プログレッシヴにおけるエポック・メイキングな趣を湛えた近年稀に見る傑作にして、大いなる可能性を秘めた軌跡・収獲と言えよう。
2.TEE/The Earth Explorer
(from JAPAN 2009)

/3.Sirocco Chase/4.Col De L'Iseran
/5.Aurora/6.City
バンドの正式名称は本アルバムタイトルでもある“The Earth Explorer”だが、実質上のフルレングス・デヴュー作録音を機に、昨年10月バンドの正式名を“ティー”と短く改称した。
先のファンタスマゴリアが2004年にデモCD-Rをリリースしてから3年後、跡を追うかの如く彼等も4曲入りのライヴ・デモCD-Rをリリースし、その後は地道で堅実なライヴ活動が実を結びポセイドンから正式にデヴューの運びとなった次第である。ファンタスマゴリアがヴァイオリンをフィーチャーしているのに相対し、ティーは専任のフルート奏者にG、Key、B、Dsから成る5人編成で、70年代のユーロ・ロックが持つ抒情性とロマンティシズムといった作風・血筋、エキゾチックなイマジン(特に2曲目の“Nomad”辺り)を日本という異国の地で脈々と受け継いだ正統派の伝承者であると言えよう。シンフォニックからジャズロック、エスノといった多種多彩な側面とヴァラエティーに富んだ、デヴュー作ながらも良い意味で“曲者”的な意欲作に仕上がっている。

彼等の唯一無比な音空間には、ファンタジックな幻想世界や妖精物語、エセ少女趣味的で陳腐なジャパニーズ・プログレは存在しない。そこにあるのは…それぞれ聴く者の脳裏に思い描かれるヨーロッパ大陸への見果てぬ“夢”と“憧憬”そして“記憶”そのものと言っても過言ではあるまい。
3.5BRIDGES/The Thomas Tracks
(from HOLLAND 2008)

/4.The Spell Of Eternity/5.Martialis' Reveries/6.Tricks & Treason
/7.Lovernius' Song/8.Batavian Revolt/9.Amazons & Heaven
/10.Sign On The Wall
ユーロ・ロック台風の目オランダから、何の前触れもインフォメーションも無く突如として現れた驚愕の新人“ファイヴ・ブリッジス”。Vo、G、B、Key、Dsから成る基本的な5人編成である。
バンドのネーミングはかのナイスの名作アルバムから由来しているが、かと言ってナイス、EL&P影響下だとかエマーソン的な早弾きキーボードはどうか期待しないように(苦笑)。彼等のサウンドの骨子は最早言い尽くされた感こそあれど、誤解を恐れずに言えば『フォックストロット』~『トリック・オブ・ザ・テイル』の頃のジェネシス、或いは黄金期のイエスないしジェントル・ジャイアントまでもがしっかりと加味された、プログレッシヴへの愛情に満ち溢れたプログレッシャーによるプログレッシヴ・ロックを愛する者の為の音楽そのものと言っても異論はあるまい。
過去から現在に至るまで世界各国に数多く存在するジェネシスをリスペクトしているフォロワー・バンド…古くはアイヴォリー、ノイシュヴァンシュタイン、デイス、昨今ならマーティガン、ザ・ウォッチ、パペット・ショウ…等と肩を並べる位、彼等は臆する事無く“ジェネシス・ファン”であると共に“プログレッシヴ・ファン”である事を誇りに、後ろめたさや迷いはおろかコピー紛いなんぞ微塵にも感じさせない位の自信と気概で臨んだ、確固たるプライドを武器に初心表明とも取れる会心のデヴューを飾ったと言えよう。
CDインナーの意匠にしろ、孤独感にも似た都会的ファンタジーを題材にしたかの様な現代(いま)のヨーロッパのヴィジョンを反映するかの様に、伝統的且つ(良い意味で)古色蒼然とした音色に敢えてリズムマシンを導入したモダンで現代的なセンスとのコンバインは、あたかも他のジェネシス影響下バンドとの類似性を避けた意欲的な試みの如く非常に好感が持てる。

如何にも地味で何の芸もヒネリも無い凡庸なジャケットに騙されない様に…。ジェネシス・ファン始めシンフォニック・ファンは聴かないと確実に損をするという事だけは断言しておきたい。本作品、アクアプラネージに続く必聴作にして傑作級!
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