幻想神秘音楽館

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zoom RSS 一生逸品 AFTER ALL

<<   作成日時 : 2017/02/24 17:18   >>

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 2017年、今年最初の「一生逸品」をお届けします。
 ここ連日過熱というか過激なまでに報道が繰り返されるトランプ新大統領政権による、何かと物議を醸している理不尽な大統領令に振り回されているかの様な混迷に瀕した昨今の世界情勢ではありますが、私の『幻想神秘音楽館』は感動的で素晴らしい音楽と文化に国境と壁は無いという旗印の下で、これからもアーティストと作品に真摯に向き合って思いの丈を綴っていきたい意向です。
 今年も…そしてこれからも皆様何卒宜しくお願い申し上げます。
 さて2017年最初の「一生逸品」、今回はトランプ新大統領の就任で国民同士が分断された感の自由の国アメリカに憂いの眼差しで見つめながら、偶然とは思いつつも…以前から是非取り挙げねばと思っていた、アメリカン・プログレッシヴ黎明期の輝かしき栄光の一枚にして、決して幻だとか伝説で終わらせてはならない類稀なる奇跡の象徴でもある“アフター・オール”に、今再び一筋の光明を当ててみたいと思います。

AFTER ALL/Same(1969)

画像
       1.Intangible She
       2.Blue Saten
       3.Nothing Left To Do
       4.And I Will Follow
       5.Let It Fly
       6.Now What Are You Looking For?
       7.A Face That Dosen't Matter
       8.Waiting

 自由の国アメリカ合衆国にとって、2017年の幕開けは波乱と多難に満ちた年になったと言っても過言ではあるまい…。
 穏健派のバラク・オバマ氏からドナルド・トランプ政権への移行…不動産王から成り上がりスキャンダルと浮名を流し、暴言と女性蔑視、数々のマスコミ口撃を展開し、理不尽とも思える大統領令の発布と署名でメキシコとの国境に壁を築くだのイスラム圏7ヶ国からの入国を禁止するだの、地球温暖化対策を放棄したりだのと手前味噌やら自画自賛に酔っているとしか言い様がない暴君トランプ大統領のもはや老害にも近い暴挙に、今やアメリカ合衆国は反対派と擁護派の二つの流れに分断され更なる混迷と不安な時代を迎えている昨今と言えるだろう。

 冒頭からいきなり時事的というかポリティカルな書き出しで始まった今年最初の「一生逸品」であるが、自由の国アメリカとて過去を遡ってもその歩みは決して平坦で無かった訳であって、ケネディ暗殺やらベトナム戦争、ウォーターゲート事件、湾岸戦争、イラク進攻、911同時多発テロ…等といったアメリカの国家社会に根付く様々な諸問題と病巣を抱えながら、見た目はグランドキャニオンの広大さやらNYの雑踏、ウエストコーストの風やら西海岸の陽気で脳天気なイメージの裏側で、時代の推移と共に政府も国民も大らかなお国柄と背中合わせな薄氷を踏む様な思いだったに違いあるまい。

 ここ連日のトランプ報道で私自身も流石に辟易となってしまい苛立ちが隠せない心境だったので、プログレッシヴ・ロックのブログであるにも拘らず申し訳なくもこの場をお借りして素直に吐き出せるものは吐き出してしまおうとつい突っ走ってしまい、閲覧している方々には本当に申し訳ない次第である…。
 いかんせん今回は当初からアメリカン・プログレッシヴ黎明期を飾る幻クラスの傑作と名高いアフター・オールを取り挙げようと決めていたが故に、どうしてもトランプ政権への苦言とアメリカ史の授業めいた様なオーヴァーラップな前置きになってしまって我ながら反省することしきりである…。

 大いなる夢と自由を求めて多種多様な移民達(この言葉ってあまり好きになれないが…)が集まって構成されたアメリカという大国に於いて、カントリー&ウエスタン、ブルーグラス、ジャズ、R&B…etc、etcは言わずもがな、古き良き時代のアメリカン・ミュージックの象徴ともいえる50年代オールディーズ+ガレージソング、プレスリーのロカビリーサウンド…といったポピュラーな部類に至るまで、とてもこのスペースで括るには整理や収拾のつかない複雑怪奇で雑多な感を抱かざるを得ない(苦笑)。
 60年代ともなると全世界を席巻したビートルズの熱気と興奮が波及し、60年代半ばから後期ともなるとフランク・ザッパやヴェルベット・アンダーグラウンドの台頭、更にはベトナム反戦運動やらヒッピーカルチャー、フラワームーヴメントと相まってウッドストック・フェスティバル、ドラッグ、アシッド、サイケデリックの名の下に、来たるべき70年代に向けてアメリカのミュージック・シーンは大きな転換期を迎え、エポックメイキングともなったヴァニラ・ファッジの登場を皮切りにアイアン・バタフライ、ドアーズ、ジェファーソン・エアプレーン、イッツ・ア・ビューティフル・デイ…等がオーヴァーグラウンドに浮上し後々のアメリカン・プログレッシヴへの礎と布石になった事は言うに及ぶまい。
 そんな時代背景を追い風に、1969年フロリダ州都のタラハシーにてベトナムから帰還したばかり(おそらくは兵役関係?)のドラマー兼リーダーMark Ellerbeeを中心に、Markと同じく地元州立音楽学校出身のオルガニストAlan Gold、旧知の間柄でもあったベーシスト兼ヴォーカルのBill MoonとギターのCharles Shortを加え、アメリカン・プログレッシヴ黎明期の奇跡ともいえるアフター・オールの輝かしくもごく僅かな短い期間の物語はこうして幕を開ける事となる。
 ちなみに1969年、キング・クリムゾンが『クリムゾン・キングの宮殿』で衝撃的デヴューを飾り、ポートランド州からはタッチが唯一作をリリースしている事も付け加えておかねばなるまい。画像



        Mark Ellerbee:Ds, Vo
        Alan Gold:Organ
        Bill Moon:B, Vo
        Charles Short:G



 アフター・オール結成以前よりメンバー全員が音楽的なキャリアと経験値はかなり長く、Alanはフロリダでトップクラスのナイトクラブバンドにオルガン兼ピアノ奏者として在籍しており、MarkとBillは長年同じR&B系バンドでのセッション経験を持ち、Charlesはジャズ畑で腕を磨いていたという実力派揃いで、当時そこいら辺のポッと出の新人の若僧とは一線を画していたが故、たった一枚の唯一作とはいえ長年培われた音楽経験に加え安定した演奏技術と構成力の高さは折り紙付きであるといっても申し分あるまい。
 時代に呼応するかの如く、アートロック、サイケデリック、アシッド、クラシカル・ロックといった要素を内包した更なる高みを目指し、画像後年実力派女性シンガーソングライター、カントリー歌手として名を馳せる事となるLinda Hargrove(左写真参照、かのオリビア・ニュートンジョンにも楽曲を提供するも、残念ながら2005年没。)を作詞に起用し、彼女の思い描くシュールで且つアーティスティックな歌詞はジャケットアートと相まってミスティックなバンドカラーとイメージを更に際立たせた意味で、その助力と功績は称賛に価すると言えよう。
 肝心要のジャケットアート一つ取っても、土中に埋められ蝋を垂らされた赤ちゃん人形に玩具の大砲が向けられているという…かのキーフを意識したかの様な何ともシュールにして意味深な感の意匠で、美的なセンスとは程遠いややもすれば悪趣味とホラー感満載な不気味さだけが印象に残りそうなものの、あり余る位に高度な音楽的センスで補っているからこそ21世紀の今日にまで名作と言わしめているのも頷けよう。
 ちなみに印象的なジャケットフォトグラフはBill Grineなる者が手掛けており、正直アメリカナイズとは真逆な感性で時代相応に見合った良い仕事をしていると思う。

 バンド結成から僅か数ヶ月間でたった数回ものギグを経て、人伝を通じてテネシー州ナッシュビルの音楽プロデューサーから運良く無償で同州にあるアテナスタジオを限られた時間制約付きという条件で数日間借り切って、スタジオ名を冠したAthenaレーベル名義で自主リリースに近い形ながらも北米プログレ黎明期の屈指の名作にして彼等唯一の本作品は、半ば突貫工事のやっつけ仕事に近い録音で臨んだまさしく幸運と奇跡の賜物と言っても過言ではあるまい。
 それはさながら…有名になって売れたいとかアルバムが売れてほしいといった気持ちよりも、むしろあの時代を生きたバンドとして“証”というか記録を遺しておきたい(今風に言えば爪痕を残したいといったところだろうか)という気持ちに他ならなかったと言ったら過剰な思い過ごしだろうか。

 古くからプログレッシヴ・ファンの間から“アメリカのクレシダ”といった売り文句で名を売ってきた彼等であるが、看板に偽り為しの如くそのあまりにブリティッシュナイズされたサウンドスタイルとカラーに、仮に悪戯心に覆面テストで音を聴かせたら殆どのプログレッシヴ系リスナーがブリティッシュ産バンドと騙される事請け合いであろう(苦笑)。
 そもそも本家イギリスのクレシダのデヴューが1970年であるが故に、正真正銘むしろアフター・オールこそが元祖ではないかと思えてならない…。
 話の横道はさて置き、いきなり長尺7分超えの冒頭1曲目からモロにブリティッシュな湿り気と曇天を感じさせる何とも悲しげで憂いを湛えたトーンのハモンドに導かれ、リズムセクションとギターが加わりアップテンポな曲調に変わるや否や、一気にヴァーティゴやネオンレーベルお得意のクラシカルなオルガンロックへと変化する様は何度も繰り返し聴く度に溜飲の下がる思いですらある。
 故ジム・モリスンを意識したかの様な歌いっぷりは、やはり当時のドアーズ人気を反映している空気感が漂っていて実に興味深い。
                 
 クラシカルでジャズィーなピアノとギターが印象的な、軽快でリズミカルな2曲目もバンドの違った側面とサウンドの引き出しが垣間見えて秀逸である。
 後半部に唯一リコーダーによるサウンドスパイス的な管楽器パートが被さってくるが、メンバーの誰かが吹いているのか或いはゲスト奏者なのかは未だ判明していないのが何ともはやである。
 1曲目と並ぶ長尺7分超えの3曲目は思いっきりジャズを意識した艶っぽいピアノが美しいブルーズィーなバラードナンバーで、スネアの強打を合図に疾走感溢れるオルガンロックに転調し渋くてヘヴィで力強い洒枯れた感の濁声ヴォーカルにきっとリスナーの誰しもが圧倒される事だろう。
 終盤再びジャズィー&ブルーズィーな曲想にに戻って静かに幕を下ろす様は、あたかも夜のしじまの中を去って行く愛しき女性に思いを馳せているかの様で切ない溜め息すら出てくる。
                 
 ヴァーティゴ風+初期プロコルハルムを思わせる端正なオルガンと寂寥感と男の哀愁漂うヴォーカルが絶妙な4曲目、時代の空気感をたっぷりと含んだアメリカン・ブルースロックながらもブリティッシュでクラシカルなハモンドが時折顔を覗かせる5曲目、VDGGを彷彿とさせるようなヘヴィな感触のオルガン・ロックが存分に堪能出来る6曲目と7曲目の流れも実に圧巻で素晴らしいの言葉に尽きる。
 ラスト8曲目にあってはリズム隊でもありツインのヴォーカリストでもあるMarkとBillとのハーモニーとコンビネーションによる掛け合いが見事で、バックに色を添えるクラシカル&スペーシー感覚なオルガンの残響が心に染み渡り、大団円を迎えて全曲聴き終えてもまた再び何度も繰り返し聴きたくなる…そんな不思議な余韻と魅力があるのもこの作品のもう一つの持ち味と言えるだろう。

 本作品リリース後メンバー全員が出来る事は全てやり尽くしたという万感の思いと共にバンドの解体を決め、各々が然るべき場所に戻って音楽活動を続けつつ、スターダムを駆け上がって心身を疲弊させるよりも、誰からも指図されず自由気儘に演奏し静かで平穏な生活を選んだ潔さに、私自身もそんな彼等の清々しい姿勢と生き方に改めて共感の思いを抱かざるを得ないそんな気持ちですらある。
 彼等自身、老齢となった現在でも決して仲違いする事無く長年に亘って友情と親交を深めて余生を悠々自適に送っている事であろう。
 そしてトランプ政権に移行した今でも自らのペースを崩す事無く、きっと心の中で“昔は昔で大変だったけどそれなりに結構と楽しかったよなァ。俺達が若かった時分の方がまだいくらかマシだったよなァ…”と呟いているのかもしれない。

 昔は高額なプレミアムの付いていた彼等の唯一作ではあるが、プログレッシヴ・マーケット的には恵まれた21世紀の昨今、幸いな事にチャンスに巡り合えばプラケース仕様始め紙ジャケットCD、果ては復刻アナログLP盤までもが入手出来る時代である。
 フランスのサンドロースの時と然り、単なる古色蒼然な古臭い時代の音と決め込む前にどうか頭と心の中をきれいさっぱり真っ白にして、彼等が生きた時代の音に真摯に接してほしいと切に願わんばかりである…。

Special thanks to Mr. Seiichi Miyasaka my friend.

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