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zoom RSS 一生逸品 CORTE DEI MIRACOLI

<<   作成日時 : 2016/10/27 18:11   >>

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 深まる秋から日に々々近付く冬将軍の足音すら感じられつつある昨今、皆様如何お過ごしでしょうか。
 10月21日に川崎クラブチッタで開催されたイタリアン・ロックフェス“ラッテ・エ・ミエーレ&デ・スカルツィ兄弟”による圧倒的なライヴ・パフォーマンスに際し、熱気と感動と興奮が未だ冷め遣らぬ私自身でありますが、目を瞑って思い返す度に甦るラッテ・エ・ミエーレの主要な名曲始め、ニュー・トロルス(名作『アトミックシステム』や『FS』)、そしてピッキオ・ダル・ポッツオといった選りすぐりなチョイスナンバーを、頭の中で何度も繰り返し反芻しては感動以外の何物でも無い…言葉では言い尽くし難い深い余韻に浸っております。
 今回の「一生逸品」はそんなイタリアン・ロックフェス繋がりで、ニュー・トロルス関連を含め10年間に亘り今回で4度目の来日を果たしているヴィットリオとアルドのデ・スカルツィ兄弟による栄光と軌跡の賜物と言っても過言では無い…マグマそしてグロッグの2大レーベルを運営していた2人の時代に着目し、中でもチェレステやピッキオ・ダル・ポッツオと並ぶ存在でありながらも唯一無比な音楽世界に加え非凡にして抜きん出ていた個性が突出していた、まさに決定打にして秘蔵級ともいえる“コルテ・デイ・ミラコリ”に今再び栄光のスポットライトを当ててみたいと思います。

CORTE DEI MIRACOLI/Same(1976)

画像
        1....E Verrà L'Uomo
        2.Verso Il sole
        3.Una Storia Fiabesca
        4.Il Rituale Notturno
        5.I Due Amanti

 70年代から21世紀の今日に至るまでPFM、バンコ、オルメ、そしてオザンナ…といったイタリアン・ロック界の名立たる大御所達は英米のシーンと同様御多聞に漏れず、長きに亘る活動期間に於いて独自のファミリーツリーを形成し、自らの力と経験或いはスキルを伸ばすと共に互いが協力し合う事で激動の時代を生き長らえて来たと言っても異論はあるまい。
 かのニュー・トロルスとて前述のイタリアン・ロック界の大御所達と同様、自らの歩みと併行して独自のファミリーツリーを形成し、イタリア音楽界の様々な多方面に於いて影響を及ぼしながら自らも試行錯誤と紆余曲折を乗り越えた末に今日があるといった…歴史の重みと言うには些か大仰かもしれないが、バンドならではの経験値の大きさと深みを改めて窺い知る思いですらある。
 1967年の結成から『コンチェルト・グロッソ1』の成功以降順風満帆な軌道の波に乗ったかと思いきや、72年の『UT』で音楽的な衝突(喧嘩別れ?)で一時的に分裂し、フォニット・チェトラに残ったニコ、ジャンニ、フランク、マウリツィオは連名で?マークのジャケットアートの唯一作『Canti d'innocenza, Canti d'esperienza...』をリリースしイビスへと改名する。
 イビス名義で74年に『Sun Supreme』をリリースするも、ギタリストのニコのみヴィットリオと和解合流し同年リリースされたニュー・トロルスのライヴ盤『Tempi Dispari』を皮切りに76年の『Concerto Grosso N. II』、そして81年にはプログレッシヴ・ポップの秀作『FS』で見事なバッテリーを務めている。
 余談ながらも先日の来日公演で『UT』から一曲も演奏されなかったのは、ヴィットリオにとってあの当時の辛い思い出…二度と思い出したくない過去があったからなのだろうか?
 当たらずも遠からじ、いずれにせよヴィットリオ自身が抱えている当時のわだかまりが解消されていないのか、或いは彼なりの心の葛藤とこだわりがあるのかもしれないが…。

 分裂後たった一人残されたヴィットリオは実弟のアルドを伴って、自らが理想とする音楽の製作環境を追求せんが為に73年に地元ジェノヴァにてスタジオGの設立に伴い同年にマグマレーベル(配給元は大手のリコルディ、後にフォニット・チェトラに移行するが)、76年にはジェノヴァを含む周辺の新進気鋭なアーティストの為にグロッグレーベル(配給元はフォニット・チェトラ)を立ち上げる事となる。
 73年〜79年という短い運営年数ながらも、ロック色の濃いマグマ経由でニュー・トロルス(正式にはニュー・トロルス・アトミックシステム名義だが)の看板を守り続け、アルファタウラスやメンバーチェンジ後のラッテ・エ・ミエーレの3rdを世に送り出し、実験的な試みの傾向を擁するグロッグからはチェレステを輩出し、実弟アルドが率いるピッキオ・ダル・ポッツオ、そして今回本編の主人公でもあるコルテ・デイ・ミラコリに助力しつつも、ヴィットリオは自らの高邁な精神と創作姿勢を頑なに守りながら、弟アルドと共に70年代のイタリアン・ロック史に於いて一時代を築き上げ、後のファミリーツリーへと繋がる基盤作りに着手していくのは最早言うには及ぶまい。

 前置きがだいぶ長くなったが、話は再び73年に戻り…ヴィットリオ自身スタジオGの設立と新レーベル発足の為の準備で奔走していたさ中、リグーリア州中部の港湾都市サヴォーナで活躍していたとあるバンドと出会う事となる。
 ジェネシス、VDGG、PFMそしてバンコといった大御所に触発されて結成された、それが本編の主人公コリテ・デイ・ミラコリである。
 ちなみにバンド名の意はディズニーアニメ映画にもなった『ノートルダムの鐘』に登場する悪党集団のアジト“Court Of Miracles(奇跡の法廷)”から由来しているとの事。
 数々のバンドで腕を磨いてきたキーボーダー兼リーダーのAlessio Feltriを筆頭に、Michele Carlone (Key)、Graziano Zippo (Vo)、そしてGabliele Siri (B)とFlavio Scogna (Ds, Per)のリズム隊を擁するイタリアのバンドらしいギターレスのツインキーボードというユニークな編成で、ヴィットリオに見い出された彼等は設立間も無いスタジオGでのレコーディング契約を交わすという幸運に恵まれ、度重なるライヴ出演とデヴュー作に向けたリハーサルとデモ形式のレコーディングを着々と積み重ねつつあったさ中、本格的なレコーディングを前に音楽的な相違でキーボードのMichele Carloneがバンドを去り、その後任としてジャズピアニストとしてのスキルも兼ね備えていたRiccardo Zegnaを迎えて本デヴューアルバムの録音に着手。
 翌1976年バンド名を冠した待望にして記念すべきデヴュー作を、発足間も無いグロッグレーベルより4番目の作品としてリリースされこうして世に出る事となる。画像



          Alessio Feltri:Key
          Riccardo Zegna:Key
          Graziano Zippo:Vo
          Flavio Scogna:Ds, Per
          Gabliele Siri:B



 冒頭1曲目の不協和音とも変拍子とも取れないアグレッシヴめいたメロディーラインに裏打ちされた如何にもといった感のジャズロックテイスト全開で、コルテ・デイ・ミラコリの摩訶不思議にして白昼夢にも似た朧気な浮遊感に彩られた音宇宙が厳か且つ豪胆に幕を開ける、まさしくオープニングに相応しい柔と剛…静と動が混在したサウンド・スカルプチュアはまさしく圧巻の一語に尽きるであろう。
 この曲のみゲストで参加しているヴィットリオのフリーキーで切り込んでくるギターソロが実に印象的で、ヴォーカルパートが入ってくると一転してクラシカル・シンフォニックな部分が顔を覗かせて、さながら、『Collage』〜『Contrappunti』期のオルメに相通ずるものすらも彷彿とさせるイタリアン・ロックならではの独特で抒情的な歌心に満ち溢れたリリシズムが私達の脳内に呼び覚まされるのだから、その奥深さには改めて溜飲の下がる思いですらある。
                 
 軽快なドラムのオープニングに導かれる2曲目にあっては、クラシカルとジャズィーな要素が綴れ織りの如くに奏でられる、さながら『受難劇』期のラッテ・エ・ミエーレの面影すらも垣間見える好ナンバー。
 スタジオG=ヴィットリオならではのこだわりと音楽的嗜好が存分に反映された音作りは流石としか言い様があるまい。
 イタリアン・ロック独特な美しいピアノにAlessioの多彩なキーボード群が絡み、Grazianoの繊細で且つ高らかな歌声が実に素晴らしい3曲目にあっては、特に後半部にかけての流れが同時期のマクソフォーネないしロカンダ・デッレ・ファーテにも共通する70年代中期〜後期へのターニングポイントをも予見させるサウンドワークが垣間見えるという点でも忘れてはなるまい。
 センチメンタリックで切ない恋情にも似通った仄かに寂しげな曲想の4曲目は、彼等の全曲中で私自身が一番好きなナンバーである。
 エレピにソリーナ、オルガン、シンセに加えて手数の多いドラム、伸びやかに紡がれるベースラインが渾然一体となって寄せては返す波の如く、時に優しく時に激しくも切ないリフレインが心の中で木霊する様は、さながらニュー・トロルスの『アトミック・システム』での“Ho Visto Poi”や“Quando L'erbe Vestiva La Terra”、果てはラッテ・エ・ミエーレの『鷲と栗鼠』の“Vacche sacre - falso menestrello”にも匹敵するであろう、何とも言えない心地良さが全身と心の隅々にまで染み渡るのかと思いきや、けたたましい電子音と共に突如として断ち切られ混沌としたサウンドエフェクトと語りとも叫びともつかないヴォイスに被さるシンフォニックな大団円といった意表を突かれたかの様な終盤に気が抜けないのが困りものである(苦笑)。
 スリリングな緊張感を伴ったオルガンをイントロダクションに導かれる、全曲中11分超のラストの大曲はまさしくコルテ・デイ・ミラコリの面目躍如そのものと言っても過言ではあるまい。
 かのフェスタ・モビーレのラストと同じ位に仄暗い陰影を湛えた、幾分ダークサイドな佇まいすら感じられるタイトルに相反するかの如き意味深で一瞬心の闇を覗き込んだ畏怖すらも想起させる最大の聴かせ処と言えるだろう。
 終盤テープ回転を徐々に落としてフェードアウトしていく様は妖しくも官能的なエクスタシーすら覚えさせられる…。
                 

 デヴュー作のセールスはまずまずといった感で、デヴューリリースと前後にギタリストのValerio Piccioliを迎えてギグへの精力的な出演を重ねバンドの強化を図るものの、次回作に向けてさあこれからという矢先にグロッグレーベル消滅(早い話が倒産)というアクシデントに見舞われてしまい、それを機にバンド自体の創作意欲は一気に低下していき、結局コルテ・デイ・ミラコリは僅かたった一年足らずで活動を停止、バンドは自然消滅という憂き目を見てしまう。
 コルテ・デイ・ミラコリの解散後、リーダーのAlessioはベースのGabliele、そしてギタリストのValerioを伴い、コルテ・デイ・ミラコリの前身バンドだったIL GIRO STRANOの再結成を試みるが、イタリアン・プログレッシヴ衰退期に差し掛かっていた時期が災いし、サウンド自体もプログレッシヴから時代相応の商業路線ポップスへと否応無しに移行せざるを得なかったのが何とも皮肉である。
 セールス的にも成功とは程遠い結果に終わり、最終的にはEL&P風のトリオを踏襲したバンドスタイルで79年まで奮起していたものの、Alessio自身の交通事故と重なりバンドは敢え無く解散。
 その後のメンバーの動向は全くと言って良い位に消息不明となり、唯一入院生活から復帰したAlessioがサウンドエンジニア兼プロデューサー、作曲家に転身して80年代全般に活躍していた事しか判明していない。
 時代が90年代に移行すると同時に、イタリアン・ロックの貴重な未発マテリアル音源の復刻が頻繁となり、御多聞に漏れずコルテ・デイ・ミラコリも73年〜74年の良質なデモ音源が発掘され、1992年Mellowレーベルより『Dimensione Onirica』というタイトルでリリースされ、最早忘却の彼方の存在でしかなかった彼等の貴重な音源に往年のファンや新しいイタリアン・ロックのファンは歓喜に沸いたのは言うまでもあるまい。
 2年後の1994年にはデヴュー直後の未発表曲を含めたライヴ音源も発掘され同じくMellowレーベルより『Live At Lux』としてリリースされるも悲しいかな現在は廃盤同然の状態なので、21世紀の今日に願わくば紙ジャケット仕様のSHM‐CDとしてリイシューに望みを繋げたいのが正直なところでもある。

 21世紀の現在(いま)、70年代末期のあの悪夢がまるで嘘だったかの様にイタリア国内からは前途有望な新進気鋭が続々と輩出されているといった活況著しい様相を呈している。
 ひと昔前なら俄かに信じ難い様なイタリアン・ロック界の大御所達がこぞって来日公演を果たし更なる新たなファンを増やしているといった、混迷な世の中でも一筋の光明とひと握りの夢が体感出来るそんな至福なひと時が味わえて大勢のファンと共有出来るだけでも幸運と言わざるを得ない。
 70年代にたった一枚の作品だけを遺して儚くも短命に終わった多くのイタリアン・ロックバンド達の無念な思いを晴らすかの如く、きっとあの日あの時ヴィットリオとアルド、そしてラッテ・エ・ミエーレのメンバー達はかつての“彼等”の思いを背負ってステージ上で精一杯白熱のライヴパフォーマンスを見せて(魅せて)くれたに違いあるまい。
 私はそう思いたい…。

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