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zoom RSS 一生逸品 CRUCIFERIUS

<<   作成日時 : 2016/06/26 21:33   >>

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 梅雨時の不安定な空模様に鬱陶しくも重々しい雨雲の下皆様如何お過ごしでしょうか…。
 今回の「一生逸品」はそんな憂鬱で気だるい雰囲気の梅雨空に相応しい、70年代ブリティッシュ・ロックの持つプログレ前夜のサイケでアートロックなフィーリングに、フレンチ・ロックのアンニュイなエスプリと気概が違和感無く融合した、一見して異端のポジションに位置しながらもフレンチ・ロック黎明期の一端をも担い、その生ける伝説の軌跡と称号に相応しく後々のフランスのシーンに於いて、その多方面で広範囲に及ぶ系譜と根幹に一役買ったと言っても過言では無い、個性派の中の更なる個性派集団“クルシフェリウス”に今一度スポットライトを当ててみたいと思います。

CRUCIFERIUS/A Nice Way Of Life(1970)

画像
       1.Big Bird
       2.What Dio You Do
       3.Let's Try
       4.A Nice Way Of Life
       5.Gimme Some Lovin'
       6.It's Got To Be A Rule
       7.Jungle Child
       8.Annabel Lee

 クルシフェリウスという何とも聞き慣れないバンド名に大概の方々なら「?」と思われるかもしれないが(苦笑)、ジャケット写真を御覧になって漸くここで「ああ…!!」と頷かれる事だろう。
 21世紀今日のフランスの音楽シーンに於いて最早言わずもがなビッグネームな存在でもあるBernard Paganotti、そしてFrancois Breantという両巨頭の若き青春時代の一頁が、このたった一枚の作品に凝縮されていると言っても過言では無いくらい、フレンチ・ロック黎明期でほんの一瞬ながらも煌めきを放っていた実に初々しくも野心的に満ちた稀有な作品ではなかろうか。

 1968年の5月革命…カルチェ・ラタンでの学生一斉蜂起という歴史的大事件を契機に時代の流れが大きく変わりつつあった頃を境に、シャンソン一辺倒だったであろうフランス国内の音楽シーンも、英米のロック・ミュージックに触発されて伝統と革新とが融合した多種多才な若き才能が芽吹き出したのは言うには及ぶまい。
 俗に言うフレンチ・ロックの黎明期を彩ったであろう…ゴング、カトリーヌ・リベロそしてマグマのデヴューを皮切りに、マルタン・サーカス、トリアングル、アリス、ムーヴィング・ゼラチン・プレーツ、演劇との融合を試みたシェン・ノワール、単発組ながらもオメガ・プラス、レッド・ノイズ、エデン・ローズ、72年以降ともなるとアンジュのデヴュー、そしてイリス、サンドローズといった名作・傑作が目白押しといった、まさに百花繚乱な様相を呈し各々の独創性と個性が色濃く反映された、今日までに至る後々のシーンへの基盤となるべく大いなる礎を築いた誠に有意義な時代だった様に思える。
 今回の主人公でもあるクルシフェリウスも御多聞に漏れず、リアルタイムに前出のフレンチ黎明期のアーティスト勢と肩を並べる実力を兼ね備え、後年のフレンチ・ロックの根幹をも担う大きな逸材を輩出した意味に於いても、良い意味で日陰な存在ながら燻し銀の如き光沢と卓越した技量とスキルを秘めた、文字通り“一生逸品”の名に相応しい傑出した一枚であると断言出来よう。

 クルシフェリウスは60年代半ばジョン・コルトレーン影響下のクルシフェリウス・ロボンズ(CRUCIFERIUS LOBENZ)なる母体バンドで幕を開ける事となる。
 かのクルシフェリウス・ロボンズにはベーシストのPaganotti、そして後に大御所マグマのブレーンとなるChristian Vanderが既に在籍しており、コルトレーン死去の1967年と同時期にバンドが解散後、PaganottiとVanderはCHINESEというR&Bバンドでプレイしていたものの各々の音楽的嗜好の相違で結局バンドは空中分解。
 CHINESE解散後Paganottiは知人の伝を頼りに新たなメンバーを募り、才能開花手前のFrancois Breant(ちなみに彼の父親は画家兼ピアニストで母親は劇場の衣装係という芸術系一家である)を始めギタリストのMarc Perru、ドラマーにPatrick Jeanと共に、コルトレーンの思いよ今再びと言わんばかりにクルシフェリウス結成へと歩みだす。画像
 余談ながらもその頃ともなるとコルトレーン影響下のジャズ路線よりもむしろ、当時主流のブリティッシュ・サイケデリックやアートロック影響下の作風へと傾倒していた事も付け加えておかねばなるまいが…。


        Bernard Paganotti:B, Vo
        Francois Breant:Org, P, Vib, Vo
        Marc Perru:G, Vo
        Patrick Jean:Ds, Per


 結成から程無くして1970年初頭に来日を果たし、“ムゲン”なるライヴハウスにて約3ヶ月もの間滞在…所謂箱バン生活を送った後、フランスへ帰国した彼等を待ち受けていたのは設立されたばかりの新興Eggレーベルからの招聘でデヴュー・アルバムに向けた正式契約だった。
 母国フランスでの活動よりも日本での箱バン生活という思いがけない大きな回り道こそしたものの、全てが結果オーライの如く良い方向に向いて待望のデヴューに恵まれた彼等は、70年代の幕開けという時代の追い風に乗ってまさに世の春到来といった雰囲気に包まれていたのは言うまでもあるまい。
 良い意味で手作り感満載な温かみを思わせるチープな印象のジャケットアートと相まって、フロイド、ナイス、コロシアム、トラフィック…等といったブリティッシュ・ロック界の名立たる個性派からの影響を窺わせ、あたかもサイケ、プログレ、ヘヴィロック、アートロックのゴッタ煮状態と乱暴に言ってしまえば当たらずも遠からずといった感ではあるが、決して思いつきやら行き当たりばったりなサウンドという訳ではなく、様々な音楽経験と素養に培われた
的確な演奏技量とスキルに裏打ちされ、決して一朝一夕では成し得ない曲作りの巧みさ緻密さ、そしてコンポーズ能力の高さには何度も繰り返して聴く度に新たな発見を覚えると共に舌を巻く思いですらある。
 個人的な思い出話で恐縮であるが、過去に何度か上京する度に西新宿の某中古廃盤専門店で壁に掲げられた高額プレミアムなフレンチ・ロックの名作…前述したエデン・ローズ、サンドローズ、イリス、レッド・ノイズ、オメガ・プラス、果てはシャンソン系シンガーのブーズ始め、フランソワ・ベランジェ、フランソア・ヴェルテーメ、ジル・ジャネランのアナログ原盤を何度かお目にかかった事があっても、かのクルシフェリウスの変形ジャケット仕様アナログ原盤だけは未だに見た事が無いというのが何ともお恥かしい限りである(苦笑)。
 蛇足ながらも…マーキーでもユニオンでも、いずれかで構わないからクルシフェリウスの変形紙ジャケット仕様のSHM‐CDをリリースしてくれないだろうか(汗)。

 1970年にリリースされた彼等の唯一作は全曲英語の歌詞によるもので、凡そマグマや後年のFrancoisのソロ作品に類似した作風を期待すると肩透かしを喰らうかもしれないが、真逆な意味ではマグマ云々だとか後年のエレクトリックミュージック一辺倒に変遷を遂げるEggレーベルのカラーを意識せずに、それらの系統の作品に接した事が無い方でも無難にスンナリと聴けて、純然たるロックの醍醐味が端々で堪能出来る事請け合いであろう。
 冒頭1曲目のイントロからサイケデリック風味満載で不穏な雰囲気を湛えるギターとドラム、ヴァイヴに導かれ、爆発的な展開と同時にメンバーとゲスト参加の女性コーラス隊による“ビッグバード〜♪”と高らかに謳われ、ブーズを思わせる様な渋くしゃがれたPaganottiのヴォイス…等が渾然一体となった、如何にもオープニングに相応しい力強さと繊細さが背中合わせに隣り合った印象的な好ナンバーと言えるだろう。
 Francoisの荘厳さの中にアグレッシヴさが漂うハモンドとアクセント的にさり気なく挿入されるヴァイヴの上手さも然る事ながら、Marcの泣きのギター、リズム隊の好演も忘れてはなるまい。
 タイトルからして一瞬あの『セサミストリート』に登場するビッグバードを連想してしまい…まあそれはいくら何でも考え過ぎではないかとは思うのだが真相は定かではない。
                 
 憂いと悲しみを湛えた感傷的なピアノをイントロに、ラテン的でファンク調なリズムへと転調する切れと乗りの良さが滲み出ている2曲目も実に印象的である。
 Patrickのファンキーなパーカッション群に加えて、ここでもFrancoisのピアノとハモンドが大活躍の秀作でブリティッシュナイズな作風でありながらも時折感じるフレンチ・ロックの感触と風合いの心地良さは何とも刺戟的且つ官能的ですらある。
 全曲中おそらく唯一ヘヴィな印象を湛えた3曲目は、Marcの重厚なギターにPaganottiのゴリゴリなベースとのブルーズィーなグルーヴ感が聴き処でFrancoisのヴァイヴが要所々々で不思議なインパクトとアクセントを与えており、単なるヘヴィロックには終止させたくないといった彼等の心憎さが感じ取れる。
 ナイス時代のエマーソンを彷彿とさせるハモンドのイントロに思わず心奪われそうな、アルバムタイトルでもある4曲目の素晴らしさと凄まじさといったら収録された全曲中、後述の6曲目と共に1、2位を争うプログレッシヴでアートロックなスピリッツ全開の傑作と言えるだろう。
 それにしても後年のFrancoisのソロ作品からは想像もつかない位の繊細で且つ豪快なハモンドのプレイには只々驚嘆する思いのひと言に尽きる…。
                 
 全曲中唯一のカヴァーナンバーでもある5曲目は、スティーヴ・ウィンウッドのペンによるThe Spencer Davis Group1966年のシングルヒット曲が彼等風にアレンジされており、幾分オリジナルよりも収録時間が長めに収録されているので、是非ともオリジナル原曲と聴き比べてほしい。
 摩訶不思議でミスティックなハモンドの響きに誘われ、サイケ調なリリシズムを湛えた時代の空気をたっぷりと含んだ幻惑的で妖しげなメロディーラインが楽しめる6曲目の刹那な雰囲気といったら、この手の曲が持つ夢想的で朧気な浮遊感と雰囲気が好きな方なら必聴必至と言わんばかりであろう。
 頭の中と心の中を真っ白にして全ての雑念を取り払って聴いてほしい屈指の名曲と言えるだろう。
                 
 ジャズィーでポップな洒落た雰囲気に彩られたサロンミュージックの感を思わせる7曲目のさり気ない曲進行の上手さといい、エドガー・アラン・ポーの文学作品にインスパイアされた黄昏時の映像をも彷彿とさせるラストナンバーでのPaganottiのダンディズム溢れる歌いっぷりといい、兎にも角にも彼等クルシフェリウスの最初で最後の唯一作は徹頭徹尾全収録曲どれを取っても全てに於いて無駄や捨て曲等が一切無い、フレンチ・ロック黎明期に於いて最高作の部類に位置するであろう…単なる青春の思い出の一頁云々といったカテゴリーで片付けられない、フレンチ・ロックの歴史の片隅に追いやり埋もれさせるには何とも勿体無い位に惜しまれる最高傑作ではなかろうか!
 ちなみにデヴューと同時期にリリースされたアルバム未収録で唯一のシングル「Music Town/Mister Magoo」の出来栄えも素晴らしい。
 アルバムと比べると本来彼等の持ち味ともいえるポップなジャズロックの側面を前面に押し出した印象を受ける。
 スペースの都合上動画が貼り付けられないのが残念だが、YouTubeで2曲とも聴けるので是非とも接して頂きたい。
 ちなみにブログ作成上YouTubeにて見つけた、当時彼等が出演したフランスの音楽番組の貴重なテレビ映像も併せて貼っておくので是非とも御覧になって頂きたい。
                 

 これだけハイクオリティーな完成度を持ったデヴューアルバムをリリースしたにも拘らず、彼等は次回作を出す事無くまるであたかも全てを演り尽くし達観したかの如くバンドをあっさり解体させ、各々が進むべき道へと歩んでいった次第であるが、皮肉にもクルシフェリウス解散と前後して新興レーベルだったEggも活動を休止せざるを得ない状況に陥ってしまい、以後バークレイレコード傘下で1976年にエレクトリックミュージック専門のレーベルとして再興するまでEggレーベルは暫しの沈黙を守り続ける事となる。

 クルシフェリウス解散以後のメンバーの動向にあっては、皆さん既に御存知の通りBernard Paganottiは旧友Christian Vanderからの招聘で74年〜76年半ばまでマグマに参加し、以後はヴィードルジュを経て自らのバンドでもあるパガグループを率いて1993年までに不定期なペースで3枚のアルバムをリリースして現在までに至っている。
 ついでと言っては恐縮であるが、70年に日本のムゲンで箱バン時代を経験してから以降、親日家となったPaganottiは一時期おときさんこと加藤登紀子のバックでベースを弾いていた事もあり、そのツアーの途上北海道の某空港にて加藤登紀子さん共々乗っていた旅客機がハイジャックされるという予期せぬハプニングに遭遇しているから何ともはやである(苦笑)。
 私自身当時テレビでニュース映像を拝見してて驚きで唖然としたのを未だに昨日の事の様に記憶しているから困ったものである…。
 Francois BreantとギタリストのMarc Perruの両名は、1973年にポップな要素を強めたジャズロックバンドのNEMO(ネモ)に参加し、2枚のアルバムを遺して解散後Francois Breantは再興したEggレーベルから再度招聘され1978年『Sons Optiques』、翌1979年にはキングのユーロロックコレクションからも邦題『千里眼』としてリリースされた『Voyageur Extra-Lucide 』の2枚の作品を発表し、以降は舞台、映画、ヴィデオクリップ…etc、etcの音楽作家として多忙の日々を送っている。
 なおFrancoisとMarcが参加したネモは、現在活躍中の21世紀フレンチ・シンフォのネモとは全く関係ない別バンドであるということを誤解の無い様に付け加えさせて頂きたい。
 PaganottiとFrancois以外のメンバーMarcとPatrickにあっては、残念ながら現在までに至る足取りが全く解らずじまいである…。
 
 ここまでクルシフェリウス一連の歩みを辿っていった次第であるが、肝心要の彼等の唯一作も4年前の2012年ドイツの新興レーベルO-Music(オリジナル・ミュージック)レーベルからリイシューCD化されるまで、全く誰からも見向きもされず時代の片隅に追いやられ埋もれたままだったというのが何とも悔やまれてならないのが正直なところである(2014年に同レーベルからリイシューされたフレンチ・レアアイテム級のイリスとて然り)。
 単にマスター音源とか版権といった交渉やら問題やらの厚い壁云々といった諸事情が絡んでいるのかもしれないが、よりにもよってフランス大手のムゼアからスルーされてしまったというのが実に憤懣やるせない気持ちで一杯であるという事もお解り頂けたらと思う。
 過去にサンドローズ始めピュルサー『Halloween』、アラクノイ、テルパンドルのリイシューで実績を作ったムゼアだからこそ自国の伝説的存在ををもっと早急に甦らせてほしかったと思うのは決して私だけではあるまい。
 そうする事によって少なくとも彼等クルシフェリウスが単なるもの珍しさでは無くて、これほどまでに当時は素晴らしい逸材だったという事がもっと早く世間から認められていた筈なのにと思うのは、私自身の穿った我が儘なのだろうか…。
 心を打つ良い作品は決して時代の流れなんぞに黙殺なんてされない。
 私たちがそれを望み求める限り、時代の片隅に埋もれる事無くいくつもの伝説が甦り続ける事をこれから先も切に願わんばかりである…。

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