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zoom RSS 夢幻の楽師達 −Chapter 43−

<<   作成日時 : 2015/11/26 18:14   >>

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 冷たい雨が降りしきる中…枯葉舞い散る晩秋真っ只中、季節は日に々々重たく垂れ込めた冬空が顔を覗かせる様になり、季節の終わりと移り変わりが目と肌で感じられる様になりました…。
 今年も残すところあと一ヶ月余、巡ってくる新たな一年に期待を寄せつつ希望を持って前向きな気持ちで時代に臨み歩みを進めたいものです。
 さて、今年最後の「夢幻の楽師達」は一年の締め括りに相応しい、アメリカ出身でありながらも並々ならぬ70年代ヴィンテージなブリティッシュとヨーロッパの作風と気概を受け継いだ、孤高や異端と言うにはあまりにも傑出し唯一無比の絶大な存在感を確立させた、まさに21世紀プログレッシヴシーンのカリスマ中のカリスマにしてダークエナジー漂うウィザードともいえる“ビッグエルフ”に焦点を当ててみたいと思います。

BIGELF (U.S.A 1991〜 )

画像 古くは50年代から21世紀の現在に至るまで、良し悪しを問わず商業ベースのロック&ポップスで隆盛と栄華を極めていた音楽産業大国のアメリカであるが、御多聞に漏れずイギリスやヨーロッパのプログレッシヴから影響を受けたバンドを今日まで多数世に送り出してきた事は、もはやこの場でも言うには及ばないだろう…。
 大御所のザッパを始めドアーズやヴァニラ・ファッジ、果てはイッツ・ア・ビューティフルデイといったサイケやアートロックをも内包したアメリカン・プログレ黎明期を皮切りに、70年代半ばのカンサス、ボストン、スティックス…等の俗に言う当時のアメリカン・ニューウェイヴの台頭、それを前後にメジャーやマイナーを問わず幾数多ものプログレッシヴ・バンドを輩出し、90年代からのドリーム・シアターやスポックス・ビアード、エコリンの登場でアメリカン・プログレッシヴは21世紀の今日までその脈々とした流れと系譜が絶間無く生き続けていると言っても過言ではあるまい。
 そんなアメリカン・プログレッシヴの長き歴史に於いて、ブリティッシュ・プログレッシヴ影響下ながらもアメリカン・ロックの乗りの良さをも加味した作風を打ち出している系統に相対するかの如く、片や一方でアメリカらしさを極力排除し70年代のブリティッシュとヨーロッパが持っていたヴィンテージ・プログレッシヴな作風を徹頭徹尾追求した系譜をも輩出している事を忘れてはなるまい。
 古くは名作『Stained Glass Stories』で一躍その名をプログレ史に刻み込んだカテドラル、そして今回の主人公にして21世紀の今日に於いて70年代イズムの最右翼として頭角を現しているビッグエルフこそが代名詞と言えるだろう。

 ビッグエルフの詳細なバイオグラフィーにあっては、国内盤ライナーで御大の伊藤政則氏がこれでもかと言う位に賛辞を添えて解説しているので、ここでは敢えて重複を避け簡単に触れる程度に留めておきたい。
 ヴィンテージな鍵盤系で武装し、あたかも魔術師(魔法使い)の如き風貌を漂わせ今やカリスマ的なキーボーダーとしてその絶対的な地位と名声を確立させたDamon Foxであるが、そんな彼自身も幼少から少年期にかけては、それこそどこにでもいそうなロス出身ならではの活発な腕白小僧だったとの事で、ロック好きな母親の影響でロス近郊で開催される様々なロック・フェスに連れて行って貰ってはパープル、サバス、ユーライア・ヒープ、果てはEL&Pやフロイドといったブリティッシュ系のハードロックからプログレとジャンルを問わず多岐に亘る名だたる大御所のステージに接する機会が多かったが故に、後々ビッグエルフ結成へと繋がるであろう大きなバックボーンを形成するに至ったのは紛れもあるまい。
 年齢を積み重ねていく度に次第にキッスやエアロスミス、AC/DCにも触発され、本格的に音楽を生業へと志す辺りになるとビートルズ、クリムゾン、VDGGにも傾倒し、1988年に同じ音楽性を志すベーシストのRichard Antonとの出会いを経たDamonは、この頃から流行の波とは一切無縁なクラシカルでヘヴィな…尚且つHM/HRファンにも強くアピール出来るプログレッシヴ・ロックの復興を目論みつつ、以前にも増して曲作りに専念するようになる。
 ちなみにフェアリーファンタジーでダークなイメージを湛えたインパクト大ながらも一度聞いたら忘れられないバンドネーミングは、Damonが当時夢中になっていたロールプレイング・ゲームに触発されRichardが無意識に叫んだ“BIGELF!!”という鶴の一声から、Damonが大いに感動感激しそのまま採用されたとの事である。

 ビッグエルフという尊大なるバンドネームを掲げ、地元ロスにてロック・クラシックの復興とクリムゾン級のプログレバンドを志すバンドメンバー募集の告知を出しては、周囲から奇異で色眼鏡な眼差しで見つめられ冷笑を浴びながらも、決して挫ける事も臆する事も無く彼等は我が道を突き進み、当時まだSNSといったネットツールが確立されていない御時世ながらも次第にDamonの嗜好する音楽性に共鳴する者が名乗り出て、ギタリストのAndrew H.M. JonesにドラマーのThom Sullivanを迎え、地道ながらも着実なる歩みを止める事無くライヴと創作活動に没頭していく事となる。
 そして1996年、念願だった6曲入りのプレデヴュー・シングル『Closer To The Doom』をセルフリリースするやいなや、地元ロスを始めアメリカ国内の70'sヴィンテージなヘヴィ・プログレッシヴに飢え欲していた信奉者的なファンから瞬く間に絶賛されるのにさほど時間を要しなかった。
 デジタル系のキーボードは極力使用を抑え、徹頭徹尾2台のハモンドオルガンに、これでもかと言う位に時代錯誤感を漂わせたサイケでヘヴィなメロトロンの音の壁が圧倒的で狂暴に迫る様は、あたかも70年代のプログレロッカーが20世紀末にタイムスリップしてきたかの如く、摩訶不思議で異質な様相を呈していたのは言うまでも無かった…。
                 
 余談ながらもコンビニエンス的な商業ロックへの挑戦状とも取れる、レコーディング・スタジオに所狭しと並べられ鎮座したDamon所有(と思われる)の使用機材…大量のメロトロンにモーグ、そしてヴィンテージな佇まいのハモンドオルガンがうず高く積まれた鍵盤系の城壁に、あたかも初期フロイドの面影をも彷彿させる心憎いジャケットアートに世界中のプログレ・ファンは大いに狂喜した。画像
 このままの気運と追い風に乗って、いよいよ本格的なフルレングス・デヴューに向けて意気揚々とスタジオ入りしたものの、ドラマーがThom Sullivanから通称FrothことSteve Frothinghamに交代し、それに呼応するかの如く今度は長年苦楽を共にしてきたRichard Antonまでもが脱退してしまい、バンドはDamonがベースも兼任するというラッシュさながらのトリオ編成を余儀なくされ、翌1997年にデヴューアルバム『Money Machine』のマスターを完成させるも、あまりにも時代錯誤で突出した個性と独創性のサウンドにアメリカ国内の大手レーベルの大半が及び腰になってしまい、結局人伝を介してヴィンテージ系ヘヴィ・プログレッシヴの聖地で総本山とも言える北欧スウェーデンのRecord Heavenから待望のデヴューを果たし、リリースと同時期にスウェーデンを含めた北欧ツアーを敢行し、温かくも好意的なファンから歓声と熱狂で迎えられる。
 ちなみに前出のプレデヴューに当たる6曲入りシングル『Closer To The Doom』も、Record Heavenによりリマスタリングが施され、4曲のライヴヴァージョンによるボーナストラックが加えられたヨーロッパプレス仕様としてリイシューされた事も付け加えなければなるまい(但しジャケットアートはオリジナルプレス盤と同じ)。
 彼等のフルレングスデヴュー作を耳にした瞬間、モロにクリムゾンの「Starless」や「21st Century〜」のフレーズが出てくる度に、私を含めた多くの世界中のプログレ・ファンの誰しもが思わずニヤリとほくそえんだ事だろう。
 正直なところ…クリムゾン・チルドレンの代名詞とまで言われたアネクドテンやら美狂乱のデヴューで受けた衝撃をも凌駕し前出の2バンド以上にインパクト大のカオス全開な世界観に思わず面食らった事を私自身今でも鮮明に記憶している…。
                 
 北欧ツアーのさ中にRecord Heavenからの紹介でフィンランド人のベーシストDuffy Snowhillを迎え、バンドは再び4人編成に戻ってツアー終了後の2001年に2作目の6曲入りシングル『Goatbridge Palace』をリリースし、さあ!今度こそはと決意し意気込んだのも束の間、今度はDamonと共にバンドの要でもあったAndrew H.M. Jonesが一身上の都合でバンドを去り、後任のギタリストにDuffy Snowhillの旧知だった同じくフィンランド出身のAce Mark を迎え、ビッグエルフはアメリカとフィンランドの混成チームバンドとして新生し、北欧ツアーの大成功が功を奏しスウェーデンのワーナーミュージック傘下East Westと新たに契約を交わし、2年後の2003年彼等の初期代表作として誉れ高い通算2作目のアルバム『HEX』を世に送り出し、ビッグエルフは文字通り黄金期を迎える事となる。
画像



      Damon Fox:Vo, Organ, Mellotron, Synthesizer, Piano, G
      Ace Mark:G
      Duffy Snowhill:B
      Steve Frothingham:Ds, Per



 心霊映像をも彷彿とさせる神秘的で不気味なジャケットアートを象徴するかの如く、前作以上に緻密な妖しくも荘厳な構成美に加え、禍々しくも暗黒の破壊性を孕んだビッグエルフ独特の音世界は、世界中の70年代ヴィンテージ・プログレッシヴを愛するファンのみならずハードロックファンをも虜にし、彼等の名声は益々高まりつつあったものの、メジャーなレーベルリリースであったにも拘らずあくまでスウェーデン限定のローカルプレスという現状のもどかしさというジレンマが彼等を大なり小なり悩ませたのも紛れも無い事実であり、Damon自身も今までと何ら変わらない現状に”このままで本当に良いんだろうか?”と自問自答の日々を送る事となる(それでもフロイドばりの領域なサウンドワークを展開する4曲目の「Disappear」の素晴らしさは格別であるが)。
 それでも地道なライヴ活動と度重なるツアー敢行、妥協無き創作精神という弛まぬ努力の甲斐あってビッグエルフは少しづつ成功への階段を上り続けていき、2005年の暮れに漸く3作目の新譜製作に着手、翌2006年の夏にはレコーディングを開始する事となる。
 そんな新譜の製作に多忙を極めていた頃を境に、彼等にとって夢の様な大いなる転機が訪れる事となる。
 2007年春、大手アトランティック傘下の新興レーベルで4 NON BLONDESの元メンバーだったリンダ・ペリーが設立したCustard Recordsと新たに契約を交わし、同年10月には2nd『HEX』がスウェーデン経由の逆輸入という形ながらもアメリカ市場に配給され、言うなれば凱旋帰国に近い形でビッグエルフはアメリカで再浮上してきた次第である。画像
 翌2008年、通算第3作目にして彼等の最高傑作として誉れ高い『Cheat The Gallows』がリリースされる頃にはバンドを巡る環境の様々が激変し、ビッグエルフは名実共に世界的な地位と名声を得る事となり、同年には以前から彼等の動向に着目していたドリームシアターのマイク・ポートノイの招聘により、ドリームシアターそして顔馴染みだったオペスと共に夢の顔合わせ揃い踏みみたいな形でUSパッケージツアー“PROGRESSIVENATION”を敢行し大成功を収める事となる。
 そして翌2009年には、何と!あのアメリカン・プログレッシヴの伝説的バンドだったイーソスのリーダー兼ギタリストでもあったウィル・シェイプの呼びかけで彼自身主宰のSharpe Entertainment Services, inc.と正式にマネジメント契約を結ぶ事となるが、この時ばかりはDamon自身もアメリカン・プログレ伝説の存在との顔合わせに天にも昇る思いだったに違いあるまい…。
 2010年3月のドリームシアターと共に南米パッケージツアー、そして同年夏にはポーキュパイン・ツリーと共に全米ツアーを敢行し、同年秋には『Cheat The Gallows』の日本国内盤がメジャー流通で正式リリースされ、それに追随するかの如く彼等の過去の作品群…『Closer To The Doom』、『Money Machine』(ジャケットはアメリカ盤仕様デザインに変更されたが)、『HEX』までもが国内盤として発売されるまでとなり、今まで通好みのバンドだ云々と散々陰口を叩かれつつプログレッシヴ専門店でしか入手出来なかった彼等が一気に形勢逆転したことを如実に物語っていて私自身感慨深いものを覚えている次第である…。
 余談ながらもあのラッシュでさえも、『Permanent Waves』での世界的な成功あればこそ(過去のバック・カタログも一挙に発売された事も含めて)今日があるという事に類似的なシンパシーを感じてならない(苦笑)。

画像 2010年の初来日公演(サマソニ)を含めた2年間ものワールドツアーを終えたと同時に、何と青天の霹靂の如く長年苦楽を共にしてきたドラマーのSteve FrothinghamとギタリストのAce Markの両名が脱退し、ビッグエルフはバンド存続の最大の危機に直面するも、残ったDuffy Snowhill、そしてマイク・ポートノイからのバックアップを得て、新たなギタリストにUFOでの活動経験があるベテランのLuis Maldonadoを迎え、リリース元も心機一転し原点回帰の思いで21世紀プログレッシヴ専門の大手INSIDEOUTに移籍し、2014年通算第4作目で現時点の最新作に当たる『Into The Maelstrom』をリリース。
 バンドの起死回生と改めて自らの音楽世界観の不退転という決意表明という意気込みに相応しい、過去の作品での実績を塗り替えつつ、かのデヴィル・ドールのMr.ドクターにも相通ずる誇大妄想狂的な一切の妥協無き一大暗黒音楽絵巻を創造したDamonこそ、まさしくその名に恥じない位の尊大且つ絶対無比な21世紀プログレッシヴ・シーンに於ける生ける魔法使いに他ならないであろう…。
                 
 今作でDamonのソロプロジェクト的な印象すら抱かせる最高潮のクオリティーであるのは紛れも無い事実であるが、これから先ビッグエルフ…或いはDamonが目指すべき野望にも似た音楽世界の果てに何が待ち受けているのか、我々世界中のファンや支持者は絶えず注視して固唾を呑んで見届けねばなるまい。

 本文最後に…2001年の2作目のシングル『Goatbridge Palace』を最後にバンドを離れ、2009年の大晦日肺炎による合併症で42歳の若さで急逝したAndrew H.M. Jonesの魂と輝かしい思い出に、このブログの本編を捧げたいと思います。合掌。

ビッグエルフ オフィシャルサイト
http://www.bigelf.com/

ビッグエルフ Facebookページ
https://www.facebook.com/bigelfmusic/?ref=profile

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