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zoom RSS 一生逸品 BLACK PAGE

<<   作成日時 : 2014/08/28 14:21   >>

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 今月の「一生逸品」は特別企画として、6月に逝去された関西プログレッシヴの重鎮にして日本のロック・ミュージック界のキーボーダーの第一人者でもあった小川文明氏への哀悼の意を捧げると共に、1985年彗星の如き衝撃的デヴューから僅か一年足らずでキング/ネクサスより唯一作でもあるアルバムを鳴り物入りでリリースし、当時吹き荒れていたジャパニーズ・プログレブームに於いて一躍時代の寵児になったと言っても過言では無い、70年代のスペース・サーカスと並ぶ日本のテクニカル・プログレッシヴのマストアイテムとして数えられる、故小川氏率いる“ブラック・ペイジ”に再び焦点を当ててみたいと思う。
 今回のブログは在りし日の氏の功績を振り返りつつ、ほんの少しでも小川文明氏の御霊の供養になれれば幸いである…。

BLACK PAGE/Open The Next Page(1986)

画像
       1.Go On !/2.A Stick & The Moon Man
      /3.Lap Lap/4.From A Long Distance/5.Elegy (Ode To S.I.)
      /6.Suite:A Story Of Music Stone
         A)Prelude/B)Looking For (Drum Solo)
         C)A Long Journey/D)So Long Mz
      /7.Paranoia/8.Interlude/9.Oyasumi


 日本のロック…ことプログレッシヴ・ロックという一種特異な分野にとって80年代は大きな転機ともいうべきターニングポイントとなった事は最早言うまでもあるまい。
 80年代の夜明け前ともいえる1979年にリリースされたムーン・ダンサーや新月を皮切りに、キング/ネクサスの発足を機にノヴェラ、アイン・ソフ、ダダ、美狂乱、ケンソーが輩出され、そんな時代の流れの空気に呼応するかの様に、84年プログレッシヴ専門誌として再出発を図ったマーキー主宰のベル・アンティークからフロマージュ、イースタン・ワークスから夢幻、LLEからはネガスフィアがこぞってデヴューを飾り、以後85年のメイド・イン・ジャパンからアウター・リミッツ、ページェント…等が登場すると同時に、(一時期とはいえ)日本のロック・シーンはメジャーやインディーズを問わずジャパニーズメタルと並んで、あたかもブリティッシュ・ポンプ勃発時を思わせるかの如く、百花繚乱さながらを思わせるプログレ一色に染まったと言っても異論はあるまい。
 これを綴っている私自身ですらも、当時は仕事の傍ら大なり小なりそれらジャパニーズ・プログレに関わる執筆に携わっていた時分でもあったので、懐かしい云々の一語ではそう簡単に片付けられない懐旧の思いを巡らせているのも事実本音ではあるが(苦笑)。
 そんなバンド側とレーベルを運営する側、そしてそれらの動向を伝える雑誌媒体を含めて様々な思惑が交錯する当時のシーンのさ中、ライヴ関係者の口コミやらプログレミニコミ誌を経由して“お世辞抜きで凄いバンドが現れた!”と一躍話題の的となったのが、画像今回の本編の主人公ブラック・ペイジであった。


       小川文明:Key,Vo
       小川逸史:G
       小嶺恒夫:B
       菅沼孝三:Ds


 ブラック・ペイジ=小川文明氏の詳細なバイオグラフィーに関しては、キング/ネクサス関連の再発シリーズやウィキペディアでも触れられているので、ここでは重複を避ける意味を踏まえ事細かに触れず簡略的に綴っていきたい。
 1960年7月に地元大阪で生を受けた小川文明は5歳の頃からピアノのレッスンを始め、クラシックからビートルズに至るまで幅広い音楽素養を身に付けつつ、73年の中学一年生の頃NHKの『ヤングミュージックショウ』で目にしたEL&Pに衝撃を受け触発された彼は、キース・エマーソンを大いなる目標に掲げて以降音楽の世界で人生を生きていく事を決意する。
 高校時代にシェーンベルク、バルトーク、ライヒといった現代音楽にも傾倒し、その飽くなき音楽への探究心と巌の様に堅い志を胸に抱きつつ大阪芸術大学音楽学科作曲専攻に進学。
 4年間勉学に励む傍ら自らが理想とするプログレッシヴな音楽スタイルを目指して研鑽に勤しむ日々を送り、大学卒業と同時期に後年日本の名ドラマー・パーカッショニストとして名を馳せる元99.99(フォー・ナイン)の菅沼孝三と運命的な出会いを経て、実弟の小川逸史(当時は兄文明と共にスパイラルを組んでいた)そして知人の伝で紹介された元ドラゴンズ・バクの小嶺恒夫を迎えて、1985年フランク・ザッパの数ある代表曲の一つからバンド名を冠したブラック・ペイジが結成される。画像
 御大ザッパからの影響も然る事ながら、やはり小川文明の根底でもあるキース・エマーソン、果てはクリムゾン、UKといったプログレッシヴからの要素と、ウェザー・リポート、日本のカシオペアといったフュージョン&クロスオーヴァーからのエッセンスとの融合といった感は無きにしも非ずではあるが、個人的な見解で恐縮ではあるが…日本のプログレッシヴ・ジャズロックという視点からすれば、同じ関西圏のアイン・ソフや関東圏のケンソーに決して準ずることの無い、独自の路線と方法論で自らのスタイルを確立させたと捉えるべきであろう。
 本場イギリスのカンタベリー系に有りがちな難解さとは無縁な、ファンタジックなカラーを湛えつつもあくまで都会的に洗練されたライトでポップな感性を纏った、良い意味でジャズィーとシンフォニックな両面性を兼ね備えた唯一無比のサウンドスカルプチュアのみが存在している。

 彼等の唯一作でもある86年リリースの『Open The Next Page』は、インストオンリーが6曲と歌物3曲によるトータル9曲で構成されており、7曲目を除いて殆どが小川文明のペンによるものである。
 軽快でリズミカルなややアジアンテイストな小気味良いキーボードが印象的なオープニングを飾る1曲目に於いて、もう既にブラック・ペイジのアイデンティティー全開が堪能出来よう。
 小川氏の日本語調っぽい英語のヴォーカルに好みの差が分かれるところではあるものの、それを差し引いても日本的なイマージュとカラーが反映されたセンス・オブ・ワンダーな曲想は、素人臭さ皆無な彼等にしか出来ない熟練技=プロフェッショナルな仕事っぷりが存分に垣間見える…まさに挨拶代わりといったところであろうか。
 摩訶不思議な印象を抱かせるジャケットのイメージをも想起させるオールインストゥルメンタルの2曲目は、まだまだ本領発揮するには早過ぎると言わんばかりな硬派で重厚感満載なテクニカル・シンフォニックが聴き処。
 決してエコヒイキという訳では無いが…全曲とも素晴らしい中で、この2曲目と大作の6曲目だけを目当てにブラック・ペイジに触れて頂けるだけでも“買い”であると声を大にして言いたい。
 3曲目は1曲目に準ずる歌物パートであるが、オープニングとは打って変わってアップテンポなバラード調で夜の帳が下りたイルミネーション瞬く都会の片隅の物語といった、あたかも男のダンディズムにも似た美学が光る佳曲とも言えるだろう。ゲスト参加のスキャット調の女性Voが曲に美しいアクセントを添えているところも聴き逃せない。
 4曲目の喜多郎を思わせる悠久なイマージュと、アンビエントで瞑想的なシチュエーションのシンセに身を委ねつつ、遠くから鳴り響く物悲しげでエモーショナルなギターに導かれてまさにタイトル通りの5曲目の“哀歌”へと繋がる展開と絶妙なまでの間が何とも筆舌し難い。
 まさしく曲想のイメージとしては男と女の別れでもあり、刹那的でアダルトな風合いながらも曲の終盤にかけて悲しみの雰囲気の中に一筋の新たな希望の光が見出せる様な、マリオ・ミーロにも相通ずる哀愁漂う泣きのギターが何とも素晴らしい。さしずめオリジナルアナログ盤のA面ラストを飾るに相応しい劇的な瞬間であるとも言えよう。
 本作品の呼び物と言っても過言では無いプログレッシヴ・マインド全開な6曲目は、小川氏の音楽性とメンバーの力量が存分に発揮された7分強の4部組曲形式の大作で、バッハのオルガン曲を彷彿とさせるオープニング始めドラムソロ、ボレロのフレーズを盛り込んだりと、終盤にかけてのドラマティックな大団円を思わせる展開が感動を呼ぶ。
 ギタリストの実弟小川逸史氏のペンによる7曲目は、後期クリムゾン+UKへのオマージュが全面的に打ち出された唯一ヘヴィなナンバーで、『太陽と戦慄』『レッド』をも匂わせるフレーズアプローチに思わずニヤリとする方々も多いことだろう。
 7曲目がいきなり断ち切られたと同時にインサートされる、美しくも甘く切ないデジタルキーボードによるヴァイオリンとオーケストレーションが厳かに響き渡る小曲の8曲目に導かれ、ラスト9曲目のヴォーカルナンバーはまさにタイトル通り小川氏の言葉を代弁するかの如く“僕達の音楽を聴いてくれてありがとう、おやすみ”と言わんばかりな感傷的で寂寥感漂う、月夜の響宴は静かに幕を下ろしたというエピローグに相応しいスローバラードに仕上がっている。何よりも小川氏と女性Voとの対比が素晴らしい…。

 鳴り物入りで堂々とリリースされた『Open The Next Page』の評判は上々で、アイン・ソフと並ぶ新たな関西プログレ・ジャズロックの新鋭として期待されるものの、関東関西で数回のギグを経たその後はメンバー各々が多忙を極めバンド名義の活動としては、2年後の1988年メイド・イン・ジャパンからリリースされたジャズロック・オムニバスアルバム『Canterbury Edge』に収録された秀作「Just A Little Dream」がバンドとして最後の作品となってしまったのが何とも惜しまれる限りである。

 小川氏自身は1990年の『Open The Next Page』初CD化に際し、インナーのレヴューにて“そろそろ新譜も出さないとね…”と語っていたものの、メンバー各々が個々の活動で多忙を極めていたが為に開店休業状態もしくは自然消滅に近い形で、バンド名と唯一作の素晴らしい高評価ばかりが独り歩きのまま時間と時代だけが静かに過ぎていくばかりだった…。
 21世紀を迎え既にブラック・ペイジに終止符を打った小川氏自身は、昭和音楽大学の講師として教壇に立ちながらも、一音楽家或いは一創作者として自らの理想の音楽に向かって邁進し、地元で親交のあったROLLYに誘われすかんちのキーボードに参加する一方で様々なジャンル違いのアーティストやアイドル等(SMAP始め筋肉少女帯、モーニング娘。、松浦亜弥、真心ブラザース…etc、etc)のレコーディングに参加したりライヴステージのサポートに立つなどして、ますます音楽家としての地位を築きつつあった。

 が、運命の神様は時として残酷な試練をお与えするものであり、今年2014年の4月から体調を崩して休養していた小川氏自身、病魔との闘いも空しく今年6月26日に容態の急変により逝去してしまう。享年53歳。病名すらも不明。逝くにはまだまだ早過ぎる…。
 
「4月末より入院、闘病しておりました小川文明ですが、6月25日未明より容態が急変し、午後永眠いたしました。音楽に囲まれながらの安らかな最期でした」 ※小川文明公式サイトより原文ママ。

 私自身、6月の「一生逸品」の執筆更新を終えた直後にFacebookの友人を経由して氏の悲報を知った次第であるが、今春バンコのフランチェスコ・ディ・ジャコモ氏が不慮の交通事故で逝去されて以後…精神的にもショックが癒えてない時分だったもので、寝耳に水の如き続くプログレ関係者の訃報に、天を仰いではつくづく運命の神様がいるのなら恨みつらみや呪いの言葉すらも叫びぶつけてやりたい気分に駆られたものである。
 逝去前の6月5日には、小川氏からのメッセージが更新され「突然の体調不良で、ひと月前に入院することになり、多くの方々にご迷惑、ご心配をおかけしてしまい、申し訳ありません。おかげさまで現在は落ち着いております。また皆さんと笑顔で逢えるように、僕も今度こそ焦らずじっくりと治療に専念したいと思います」、と復帰を目指していただけに、私自身返す々々も悔やまれてならないのが正直なところである。

 小川氏の訃報に際し、今月の「一生逸品」は供養と追悼の意を表して絶対にブラック・ペイジを取り挙げて、氏への冥福を祈らねばならないと固く心に決めていた次第である。
 生前、小川氏の創作精神を継承するであろう新進女性キーボーダー小川真澄の2010年のデヴュー作『Asterisk*』に対し大いなる賞賛を贈っていたのが非常に印象に残っている(下世話な話で恐縮であるが…同じ小川姓という事で当初は何らかの血縁関係者ではないかと思っていた。結局はたまたま同じ小川姓というだけであったが)。
画像

 
 小川真澄、そして関東のLu7に受け継がれ、天国の小川氏の魂と高らかな創作精神という唯一無比の音楽財産は今でもなお生き続けている…その事を思うだけで感慨深く胸が熱くなる。
 聴き手である側の我々も小川氏の心と魂に精一杯応える為にも、プログレッシヴ・ロックの未来を担う後継者や新進達を育て見守り続けていこうではないか!

 再度改めてこの場をお借りして、天に召された小川文明氏の御霊に慎んで御冥福をお祈り申し上げます。
 そして素晴らしい作品と思い出を有難うございました。合掌。

 小川さん…どうか天国からプログレッシヴ・ロックの将来を見守ってて下さい。

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