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zoom RSS 夢幻の楽師達 −Chapter 35−

<<   作成日時 : 2014/07/26 12:20   >>

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 鬱陶しくて気分的にも暗く重くなりがちな梅雨時が明けて、連日の照りつける様な灼熱の陽光の下、季節はいよいよ夏本番といったところですが皆様如何お過ごしでしょうか?
 プログレッシヴにとっては最も不釣合いな苦手ともいえる時季ではありますが、空調の効いた涼しい部屋で猛酷暑の暑さを暫し忘れる位に白昼夢の如き音楽世界に触れるのも悪くないでしょう。
 今回の「夢幻の楽師達」はそんな夏の暑さとは無縁なクールでダーク、そしてインテリジェントな研ぎ澄まされた知性を武器に、昨今リリースされた新譜で今や30年選手というキャリアを誇る大ベテランにして、80年代ポンプ・ロックシーンが生んだ屈強の頭脳集団とも言える“I Q”に焦点を当てて、改めてその33年間の道程を振り返ってみたいと思います。

I Q (U.K 1981〜 )

画像
 80年代初頭に大英帝国で勃発したプログレッシヴ・リヴァイバル…通称“ポンプ・ロック”なるムーヴメントは、Pomp=豪華・栄華といったその言葉とは裏腹に、往年の70年代プログレッシヴ黄金期を崇拝・敬愛する者達にとっては(当ブログで何度も言及してきたものの、今となっては一笑に伏される話ではあるが)、勃発当時なんてそれはもう嘲笑にも似た侮蔑或いは蔑みにも近い忌み嫌われの対象として捉われてきた感は否めない。
 デヴューシングルが大ヒットとなって一躍注目の的となったマリリオンを突破口に、パラス、今は亡きトゥエルフス・ナイト、更には雨後の筍の如くペンドラゴン、ソルスティス、そして今回の主人公でもあるIQの登場は、80年代当初いろいろと賛否両論やら憶測こそ招いたものの、今世紀・今日までに至るシンフォニック・ロックへの礎と道程を築き繋いでいったのは紛れも無い確証たる事実と言えるだろう。
 まあ…良し悪しを問わず当たらずも遠からず当時隆盛を誇っていたNWOBHMの波に乗って、マリリオンのデヴューアルバムみたくやや見切り発車とでも言うのか、未熟な域から抜け切れないまま青田刈りといった形容に相応しく大手メジャーなレコード会社の口車やおだてに乗せられた経営戦略の道具に利用され、“とりあえず唾付けとけ”といった商魂ミエミエ感に、自分自身少なからず今でもあの当時のネオ・プログレに対するぞんざいな扱われ方を思い返すと辟易してしまう。
 そんなさ中においてクオリティー云々の良し悪しを抜きに自主リリースながらも、相応に高い好評価が得られたIQやソルスティスはまさしく奇跡の賜物にして稀有な存在だったと言っても過言ではあるまい。

 悲劇のタイタニック号が出港した事で知られる、栄華を極めたかつての港湾都市の名残を残すサザンプトンにて1981年 Peter Nicholls、Mike Holmes、Martin Orford、Tim EsauそしてMark Ridoutの5人の若者達によってIQのオリジナルラインナップが出揃う事になるが、翌1982年はドラマーがPaul Cookに交代してIQの栄光の歩みはここに本格的に幕を開ける事となる。画像

           Peter Nicholls:Vo
           Mike Holmes:G
           Martin Orford:Key
           Tim Esau:B
           Paul Cook:Ds

 彼等自身がフェイヴァリットとする初期から中期のジェネシス+スティーヴ・ハケットが持っていた方法論と精神を継承した、伝統と正統派ブリティッシュ・プログレッシヴの王道を地で行く真摯で頑なな姿勢で地元のクラブを始めロンドンのロックの殿堂マーキークラブにてレギュラーで定期的に出演回数を積み重ね、彼等の評判と知名度は瞬く間に上昇すると共に、82年に自主製作したカセット作品『Seven Stories into Eight』でバンドの人気は決定的なものとなる。
 翌1983年、自主製作特有の粗削りで録音クオリティーが今一歩といった印象ながらも、ヴォーカリストPeterが手掛けた摩訶不思議なジャケットデザインに包まれた待望のフルレングス・デヴュー作『Tales from the Lush Attic』は、極端に御大のゲイヴリエルを意識した歌唱法とメイクに加え、並々ならぬハケットやバンクスへの敬愛とリスペクトが感じられるギターにハモンドとメロトロンを大々的に駆使した鍵盤系の大活躍に、マリリオンのデヴューで意気消沈していたファンは歓喜の唸りを上げ大々的に喝采を贈った。

 余談ながらも少しだけ本作品にまつわるエピソードに触れておくと、初回プレス盤はブルー(水色)が下地でバンドロゴも異なっており、自分自身が某プログレ輸入盤店で入手した時にはもう既にレッド(小豆色)の下地でバンドロゴも変わったセカンドプレス盤のみが出回ってて、後にも先にも初回オリジナルプレスとは数年前に某店頭でお目にかかっただけという縁遠い存在となってしまったのが何とも惜しまれる限りである(内容等に全く変更が無かったのが幸いであるが…)。
 本来なら初回オリジナル仕様を掲載したかったのであるが、私自身の思い出(思い入れ)の深さを考慮して今回は赤地のセカンドプレス仕様を使った事をどうか御容赦願いたい(苦笑)。

画像 デヴューアルバムの好評は彼等の人気に拍車をかけイギリス国内外でもツアーサーキットの回数が増え、続く84年に12インチシングルのIQ流プログレレゲエともいえる異色作「Barbell Is In」のリリースを経て、翌1985年にデヴュー作の延長線上ともいえる2nd『The Wake』をリリース。
 Peterの手掛けるイラストデザインが幾分キム・プーアを意識したタッチであるという事に加え、デヴュー作から較べると気持ちの余裕と音楽的な幅の拡がりをも窺わせる、同時代的にしてアップ・トゥ・デイトなセンスが光る好作品に仕上がっている。
 この当時に於いて彼等自身は国内外で年間200〜300回以上ものギグを消化しつつフェスにも参加したりと、それに比例して人気もうなぎ登りに上昇していった次第であるが、そんな繁忙期に相反するかの如くメンバー間にはフラストレーションやストレスの蓄積が重なり、特にフロントマン的役割のヴォーカリストPeterが一番堪えていたらしく、医師からのドクターストップで暫くの活動休止までも余儀なくされてしまう有様だったそうな。
 メンバー間の対立こそ無かったものの、穏やかな生活を望んでいたPeterは泣く泣くグループから離れ、本来の正業でもあるイラストレーターに専念し、仕事7に対し音楽活動3の割合でスローペースながらも自らのプロジェクトNiadem's Ghostで細々と地道な創作活動に留めていた。
 幸か不幸か活動は軌道に乗る事無く作品すらもリリースされないままで終止したみたいだが、良い方に解釈すればそれが却って後々の為に備えたリハビリ兼充電期間だった事も頷けよう。

 Peterがバンドを去った時期と前後して残された4人は旧知の間柄だったPaul Menelを迎え、セルフリリースで良質な作品ながらも音質的には弱体と指摘された面を強化する為、人伝を頼りに大手のヴァーティゴ傘下だった新興レーベルSQUOWKと契約を結び、画像画像2年後の1987年に『Nomzamo』、そして89年に『Are You Sitting Comfortably?』といった、メジャーな流通ながらも決して商業主義には陥っていない2枚の好作品をリリースし、同期的存在のマリリオンと共に次世代のネオ・ブリティッシュ・プログレの担い手として確固たる地位を築くまでに至る。
 特に『Are You Sitting Comfortably?』にあっては、かのラッシュと共に多数の名作を世に送り出した名プロデューサーのテリー・ブラウンが起用され、シンフォニックなテイストとスピーディーな疾走感にも似たエモーションが結実した意欲作に仕上がっているのも特筆すべきであろう。
 ヴォーカリスト交代後も決してクオリティーが下がる事無く、むしろ順風満帆な軌道の波に乗っていた彼等であったが、90年代に差しかかるという非常に大切な時期であったにも拘らずヴァーティゴ側からの一方的な契約解消を突きつけられ、IQはバンド結成以来最大の危機に見舞われ、それから以降2年間は大いなる挫折を味わい辛酸を舐めさせられつつバンド活動の一切合財を全て停止してしまう。
 悪運と不幸は更に拍車をかけ、音楽的な方向性の食い違いからPaul Menelと長年苦楽を共にしてきたTim Esauの両名までもが脱退し、この時点で国内外の彼等のファン誰しもがIQはもう終わったものと落胆していたであろう…。
                 しかし…彼等はそういとも簡単に終わる筈が無かった。 

 1991年、長らく待ち望んだバンドのフロントマンPeter Nichollsが心身ともにリフレッシュしてバンドに復帰合流した事により、今まで頭上に垂れ込めていた暗雲を振り払うかの如く、2年間もの停滞・低迷期から漸く脱したIQは新たな光明を見出すと共に、改めて90年代以降もその健在ぶりをアピールかの様に再出発を誓うのだった。
 新たなベーシストにバンドデヴュー以前からの旧知の間柄だったLes Marshallを迎えて新作の準備に取りかかるも、僅かたった2回もの復活ギグの後不慮の事故(病気?)でLes Marshallは帰らぬ人となってしまう。
 しかしこの事が彼等を奮い立たせ、決して悲しみに臆する事無くまるで弔い合戦の如く新譜リリースへの原動力へと繋がったのは言うまでも無かった。
 大いなる挫折をも乗り越えた彼等が精一杯出来る事…それこそ亡き友への友情に応える事しか頭に無かったと言っても異論はあるまい。
 過去の失敗を払拭するかの様に、彼等自身のセルフレーベルGIANT ELECTRIC PEA(通称GEP)をも設立し、自らをコントロールし活動から運営に至るまで、全てに於いて彼等は自我に目覚め現在までもその飽くなき精神を貫き通している。
 新たなベーシストとしてARKを抜けたJohn Jowittを迎え、4年振りにリリースされた通算5作目の新譜『Ever』は、Peterのイラストデザインを含めて原点回帰を踏まえ初心に帰るという意味合い通りIQの再出発画像画像を飾るに相応しい会心の一枚となり代表作となった(GEPの第一回配給作品となった事も付け加えておく)。
 IQの復活劇は全世界中の多くのファンから大絶賛と共に温かく迎えられ、もうこの頃には単なる一過性のポンプ系バンドと蔑む者などおらず(最早この時点でジェネシスのフォロワーバンドと語る輩は皆無であろう)、名実共に70年代の大御所プログレバンドと並ぶ重要な存在へと認知される様になった。
 4年後の1997年、実質上これが90年代最後の作品にして大きな節目=ターニングポイントとなった2枚組のヴォリューム感満載の超大作『Subterranea』は、御大ジェネシスの2枚組大作『眩惑のブロードウェイ』とはまた趣が異なったロックオペラにも似たシンパシーを湛えつつも、シンフォニックなトータルアルバムとして最高峰級の完成度を誇る名作としてブリティッシュ・プログレ史に大きな足跡を残す偉業を為し遂げる。
 
 そして時代は2000年を迎え、20世紀と21世紀に跨ぐ形でリリースされた(20世紀最後の作品でもある)『The Seventh House』は意味深なデザインと相まって、ダークなイメージを纏った反戦というテーマすら想起させる今まで以上にシリアスな世界観を謳った異色作であると言えよう。
 本作品に於いてMike Holmes(プロデューサーも兼ねる)とJohn Jowittの両名がメインライターとなって、実質上ギタリストとベーシストによるイニシアティヴが遺憾無く発揮された、硬質で荒涼たる不穏なイマジネーションが反映されたと言っても差し支えはあるまい。
 同時期にキーボーダーのMartin Orfordが、自身のソロ作品『Classical Music and Popular Songs』に専念していた為、本作品に於いてはMartin自身あまりそう深く関与していないのがやや気になるところであるが、後々の事を考慮すればこれが彼とバンド側との拮抗というか軋轢の始まり(予兆)だったのかもしれない…。画像画像 皮肉な事にその小さな不安は量らずも大きく的中する事となり、長年ギタリストのMikeと共にIQのメインライターとしてバンドのイニシアティヴを担ってきたMartin Orfordが、2004年リリースの通算第8作目『Dark Matter』を最後にバンドから去る事となったのは、バンドサイドのみならず多くのファンにも衝撃を与える事となった。
 私自身、某SNS経由の友人がMartinと近しい間柄であるが故に、(友人並びMartinの名誉の為にも)安易に下手な憶測で言及するのだけは御遠慮しておくが、早い話…Martin自身、今日のネット社会に付随した音楽配信やらダウンロードに不快感と不信感を募らせていた事だけは声を大にして言っておきたい。
 Martin自身、非常に勤勉で真摯なアーティストであるが故に、心身の疲弊と重なって何かしら納得出来ない許し難いところもあったのだろう。これ以上の明言だけは避けておくが…。
 そんなMartinの心の内の葛藤とは裏腹に、『Dark Matter』の完成度はまさに最高潮と言わんばかりのテンションそのものだったというのも実に皮肉な限りである。
 前作以上にダークな様相を湛えつつ、IQらしい高水準な音楽性とメロディーラインが濃縮還元された、Martin自身万感の思いの丈が込められた集大成的な趣すら窺わせる。
 IQを辞めたMartinは、その4年後の2008年アーティストとしての最後のソロ作品『The Old Road 』というブリティッシュ・ロックスピリッツ溢れる素晴らしい好作品をリリースし、全世界中のファンから惜しまれつつ現役を引退し、現在はイギリス国内の某博物館の学芸員として招聘され多忙な毎日を送っているとの事。
 
 主要メンバーだったMartinが抜けたIQは後任Key奏者の選考に奔走するものの、それと前後して今度は一身上の都合により長年ドラマーを務めていたPaul Cookまでもが脱退し、バンドは事実上暫しの活動休止を余儀なくされる事となる。
 『Dark Matter』のリリースから5年後の2009年、IQは新たな2人のメンバーとしてドラマーにAndy Edwards、そして肝心要のキーボーダーに新進のシンフォニック・グループDARWIN'S RADIOのメンバーも兼任するという形でMark Westworthを迎えて、スタジオ作品通算第9作目の『Frequency』をリリース。画像 電波とネット、ウェヴ…それを取り巻く人間と自然界といった実に意味深で先鋭なテーマで構成された意欲作に仕上がっており、前任のMartinとは違ったMarkのキーボードアプローチに当初は戸惑うファンも多かったとか(苦笑)。
 まあイエスで喩えたらリックからパトリック・モラーツに変わった『リレイヤー』と同様の捉え方と言えば当たらずも遠からずといったところだろうか。妥当な言い方では無いかもしれないが…。
 新たなメンバーを迎えて、このまま上がり調子でバンドが続くものと予見していたファンの期待を他所に、バンドは結成から30周年を迎える事を機にまたしても大きな変革が訪れる事となる。
画像 2010年にドラマーのAndy Edwardsが抜け再びPaul Cookが戻ってきた事を皮切りに、キーボーダーのMark WestworthからNeil Durantにチェンジ、そして翌2011年にはJohn Jowittが抜けた後任に再びオリジナルメンバーだったTim Esauが戻って、実質上IQはKey以外は再びデヴュー時のメンバーが顔を揃えるという異例の展開を見せる事となる。
 原点回帰…或いは初心に帰ったと言うべきなのか、彼等は結成30周年を節目にあのデヴュー当時の感性と気持ちに戻って発奮し、一心不乱に自問自答するかの如く新譜の製作に没頭した。
 そして今年2014年バンド結成から早33年…記念すべき通算第10作目の新作『The Road Of Bones』をリリースしIQサウンドここに極まると言わんばかりな、重厚にして厳か、そしてダークなイマジネーションとリリシズムを湛えた最高傑作として多くのファンに迎えられ現在に至っている。

 ここまで駆け足ペースで彼等の歩みを追ってきたが、スペースの制約の都合上…あまりダラダラと長ったらしい説明調的な回顧録みたいな文章だけにはしたくなかったが故、枝分かれみたいなIQファミリーツリーのバンド関連ジャディス始めビッグ・ビッグ・トレイン、アリーナ…etc、etcとの繋がり云々は敢えて省略させて頂いた事をお許し願いたい(その辺はIQを紹介しているウィキペディアのサイトを御参照頂きたい…)。
 前述でも触れたが、70年代プログレッシヴ偏重主義といった感のファンからあたかも蔑みの対象として捉われていたポンプ・ロックアーティスト達も、振り返ってみればマリリオン始めパラス、ペンドラゴン、ソルスティス、そしてIQも数えたらもう30年選手というキャリアを誇り、プログレッシヴ・ロック史に燦然と輝く名作・傑作を多数世に送り出し、巨匠という名に相応しい年代に入っているという事に改めて頭の下がる思いですらある。画像
 今回改めてIQというバンドに向かい合いつつ、一連の作品を再度繰り返し聴きながらも、彼等は決して天才肌でも熱血型の努力家タイプでも無く、バンドネーミング“IQ=知能指数”という言葉通りの天賦の才気に満ち溢れ、時の運や人脈と人望をも味方に付け大勢のファンに支えられ、様々な紆余曲折と試行錯誤を乗り越えて今日までの長い道程を歩んでこれたものであると信じて疑わない。
 彼等とほぼ同世代でもある私自身、あともう何年…否!何十年彼等の行く末とその創造する音世界に付き合えるかどうかは神のみぞ知るところであるが、彼等の知能指数が永続する限り自ら喜んでしっかり見届けていけたらと心から願わんばかりである。
 近い将来、クラブチッタで彼等の初来日公演の雄姿を思い描きながら…。

IQ オフィシャルサイト
http://www.iq-hq.co.uk/

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